トーヤアキラの一日 48


(48)
明るい場所で顔を合わせるのは恥ずかしく、お互いにちゃんと視線を合わせられない。
部屋の中をぐるりと見回したヒカルが、照れ隠しのように笑いながら声を出す。
「うわー、塔矢アキラの部屋はイメージ通りだなぁ!ヘヘヘ」
「どんなイメージ?殺風景って言いたいのだろ?」
「違うよ。ちゃんと片付いていてキチンとしてるっつーか、余計なものが無いっつーか」
「同じようなものじゃないか」
そう言いながらアキラがコートと上着を取るために動いたので、今までアキラの後ろに
隠れていた机がヒカルの正面に姿を現した。
その机の上に置かれているPCを見たヒカルから笑顔が消え、表情が固くなったのを
アキラは見逃さなかった。
アキラはヒカルを視界の中に入れながら、コートと上着とネクタイをハンガーにかけ、
シャツの上からカーディガンに袖を通した。
PCを見詰めていたヒカルは、アキラの視線を感じたのか、わざとらしく部屋を見回すと、
急に叫んだ。
「あっ!いけね!晩メシまでに帰るって言って来たんだった!!電話しなくちゃ!」
「・・・電話なら玄関にあるから使って」
「あ、玄関?じゃあ借りるな」
「廊下を右に行けば分かるから」
「サンキュー」
そう言ってヒカルは急いで玄関に向かった。
残されたアキラはPCを一瞥すると、遠くのヒカルの声を聞きながら、素早く汚れた
下着とズボンを着替えた。



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