誘惑 第三部 49
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だが応戦も虚しく、ほとんど弄られるだけ弄られ続けた。
「ああっ、塔矢、塔矢、オレ、もう、」
耐え切れずに弱音を吐いてしまうと、くっと顎を掴まれた。
むりやり顔を上げさせられてアイツを見上げると、アイツときたら、これくらいで音を上げるのか
と、挑発するように嘲っている。
畜生。このサド野郎。
誰が、音を上げたりするもんか。
そう思って、あいつの目を睨み上げた。
けど、それが最後の抵抗だった。
オレの睨みつける目に笑った塔矢が少しだけ手を緩めたように感じたのが間違いで、次の瞬間、
激しく動かれた。
耐え切れずに一人で先にイっちまったオレを、あいつの手が支える。
もう名前を呼ぶ気力さえ残っていなかった。
かろうじてまだ動かせる腕をあいつの首に絡めてキスをねだると、それでもオレの中で勢いを失っ
ていないあいつが、オレに優しいキスを送りながら、またオレの中で動き出す。それは猛々しくオ
レを突き動かすくせに、あいつの唇は柔らかくて優しくて、下半身の感覚がもう麻痺してしまいそ
うなオレの上半身は、その優しさに溶けてしまいそうだった。
「……と…や…」
やっとの思いであいつの名前を絞り出すと、オレのほっぺたの上で、あいつの唇がオレの名前を
呼ぶように動いて、あいつの熱い息がオレの顔にかかる。それだけでもう、頭の芯まで痺れてしま
いそうだ。
あいつの唇が優しいなんて思いっきりオレの勘違いなんだ。違うんだ。焦らして、弄って、オレを泣
かして喜んでるだけなんだ。そうだろう?優しいなんて勘違いして、嬉しいなんて思っちゃいけない。
アイツはそんなに優しくなんかねぇ。違うんだ。だけど。
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