失着点・龍界編 49


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棋院会館の資料室で緒方はようやく沢淵の名を見つけた。古い記録で
アマチュアの学生チャンピオンであり、他にもありとあらゆる賞を手にして
いた。一流大学に進学し、武道の大会にも顔を出す文武に秀でた優秀な
学生だったようだ。だが沢淵はプロにはなれなかったのである。
最後のチャンスと自分で言っていたプロ試験に落ちた時の沢淵の落胆振りは
古参の棋院会館の職員の記憶にも残っていた。
どんなに才能があってもプロの世界とは縁がない者たちはいる。
だからと言って、沢淵に同情する事は出来ない。
緒方はPCで沢淵の所有する不動産をリストアップする。商才はあったようで
都内にいくつかのビルとマンションを所有しているようだった。数多くの
アマチュアの囲碁大会のスポンサーにもなっていたことがあるようだ。
うさん臭い噂がありながら表ざたにならないのにはそういう
表の顔の部分があるからだろう。
「進藤が言っていたマンションは、どれだ…?」

ヒカルが連れ出される時、三谷は残された。相手をする客が居たからだった。
「もうすぐ一時間が経つ…」
ビルの前で和谷は焦りを募らせる。緒方とまだ連絡がつかなかった。
「もう一度棋院会館にかけてみるか…」
最初にかけた時は、緒方は来ていないと言う返答だった。
その時伊角からヒカルが車に乗せられて出て行ったという連絡が入った。
「何だって!?」
「あっという間で…ナンバーは一応見たけど…あっ!」
和谷に電話しながら伊角は一人で建物から出て来た三谷を見つけた。



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