Linkage 49 - 50
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「ア…アキラ君、もう出たのか……。いやな、キミのパジャマ代わりの服を探していたんだが……」
そう言って緒方はコットンシャツをアキラに手渡すと、再びクローゼットを睨み、今度はブツブツ呟き始める。
「……パンツはなァ……オレのを履かせるわけにもいかんし……。取り敢えずパジャマの下になるような服は……」
「あの……緒方さん、ボクこれでいいですよ」
アキラはクローゼットの棚からはみ出したベージュの麻のバミューダパンツを指差した。
「これかァ?寒くないか?」
緒方はバミューダパンツを引っ張り出すと、目の前に広げ、まじまじと眺めながらアキラに尋ねた。
「暖房が効いてるし、大丈夫ですよ。……パンツは……無くても、ボク……」
頬を赤らめながら恥ずかしそうに笑うアキラに、緒方は頭を掻いた。
「さっき脱いだ下着は、洗濯乾燥機にかければ明日の朝までには乾くから……、じゃあ今夜は我慢してもらうか」
緒方の言葉にアキラは頷くと、緒方の目の前で早速コットンシャツとバミューダパンツ姿に着替える。
「オレもサッと風呂に入ってくるから、アキラ君は冷蔵庫からペリエでも出して飲んでいてくれ。
……それにしても、このシャツがもっと薄手なら完全にリゾートルックだな」
アキラには長すぎる袖の部分をまくってやりながら、緒方は肩をすくめて笑った。
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ソファに腰掛け、ペリエを飲みながらドライブに行く前に見ていた熱帯魚の写真集をパラパラめくっていた
アキラの前に、バスローブ姿の緒方が現れた。
「アキラ君の周りだけは南国リゾートだな」
散らかったクローゼットを手早く片付けながら、アキラに向かって楽しそうに語りかける。
アキラはクスッと笑うと、立ち上がって緒方の側に歩み寄り、クローゼットを覗き込みながら尋ねた。
「ボクも何か手伝いましょうか?」
「もうすぐ終わるから大丈夫だ。それより洗面所に歯ブラシを用意してあるから、歯を磨いておいで。
そろそろ寝ないと、明日は学校だろ?」
壁の時計は10時半をちょうど過ぎようとしている。
アキラは小さく頷き、大人しく洗面所へ向かった。
片付けを終えクローゼットの扉を閉めると、緒方はアーロンチェアに腰掛け、PCデスク横の引き出しから
以前小野から貰った薬の説明書を取り出した。
服用量についての注意事項を何度も読み返す。
(取り敢えずは……オレの半分にしておくか……)
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