初めての体験 49 - 50
(49)
「進藤、ちょっと話がある。」
研究会の後、師匠である森下がヒカルに声を掛けてきた。森下は少し怒っているように
見えた。『オレ…何かしたっけ…?』ヒカルは、きょとんとした顔で森下の顔を見返した。
森下は苦々しげに言った。
「お前、最近、塔矢アキラと会っているそうだな?」
ああ…そのことか。と、ヒカルは思った。ただ会っているだけじゃなく、付き合っていると
知ったら、森下はどんな顔をするだろうか?それを想像して、ヒカルはクスクスと
忍び笑いを漏らした。
「…!?何が可笑しいんだ?」
「何でもありません。」
ムッとしている森下に、すました顔で答えた。
「どうなんだ?」
ヒカルのそんな態度が癪にさわるのか、森下はヒカルを厳しく問いつめてくる。
白状するまで帰さないといった雰囲気である。何だか可笑しかった。
逆に、ヒカルは森下に問い返した。
「先生…先生こそ、どうしてそんなに塔矢門下を気にするんですか?」
「そ…それは…!」
ヒカルは、森下が塔矢行洋にライバル意識を持っていることをもちろん知っている。
そして、知っていて敢えて挑発するようなことを続けて言った。
「オレ、塔矢門下の人たちと仲良くしたいな…塔矢先生もすごい人だし…」
「何?」
ヒカルの挑発に森下は簡単に乗ってくる。
「オレ…この前、塔矢先生に一局打って貰ったんですけど…すごかったな…」
森下の顔色が変わった。自分の門下の秘蔵っ子が、ライバルを惜しげもなく褒めちぎる。
森下は行洋が嫌いなわけではない。ライバルであり、尊敬している相手でもある。だからこそ
負けたくないのだ。
そんな森下をヒカルはさらに煽った。
「やっぱり塔矢先生は別格というか…違う気がする…」
「!!」
ヒカルは、森下を横目でチラリと見た。そして、「何を―――!」と怒鳴りかけた森下を制した。
「先生…オレと一局打ってください…塔矢先生よりすごいかどうか見せてください…」
と、言うが早いか森下の唇を奪った。
(50)
ヒカルは森下に勢い良く抱きついて、そのまま畳の上に倒れ込んだ。森下の口の中に
自分の舌を差し込んだ。男臭い匂いがヒカルの口の中に広がった。
森下は藻掻いた。ヒカルをはね除けようと思えば、簡単に出来るはずなのに何故か
巧くいかなかった。華奢なヒカルにのし掛かられて、いいようにされている自分が不甲斐なかった。
ヒカルの手が森下の股間のあたりを彷徨った。森下の耳に、ファスナーを下ろす音が聞こえてきた。
「先生…じっとして…」
藻掻く森下の耳元でヒカルがそっと囁いた。その蠱惑的な声音に森下自身が反応した。
ヒカルはにんまり笑うと、中身をズボンから取り出し、弄び始めた。
ヒカルが手を動かす度に、湿ったような音が周囲に響いた。森下はヒカルが与える快感に耐えようとした。
「先生…気持ちいい…?」
いつの間にか森下の胸元ははだけられ、ヒカルがそこに舌を這わせていた。指で森下自身を
愛撫しながら、乳首を責めた。森下はヒカルの手練手管に翻弄された。
頭の中が白くなっていく。
「うぅ…」
「森下先生は…塔矢先生とは違うね…塔矢先生は…」
呻く森下の耳に、ヒカルの声が届いた。森下は“塔矢”という言葉を聞いたとたん、
ヒカルを自分の上から乱暴に押しのけると、そのまま畳の上に縫いつけた。
ヒカルはびっくりして、目を瞠った。何が起こったのだろうか…?
|