クチナハ 〜平安陰陽師賀茂明淫妖物語〜 49 - 56


(49)
――疼く内壁をじっくりと擦られる感覚。
息づく明の後門の、奥の一点にクチナハの頭部が押し付けられ、
柔らかく捏ねるように圧迫しては離される。
明の敏感な内部は、クチナハがその先の割れた舌で奥をチロチロと撫でる
あるか無きかの刺激をさえ克明に感じ取った。
人の――近衛の手で与えられるのとはまた別の、変幻自在で繊細なクチナハの快楽に
身も心も蕩かされてしまいそうだった。

そんな明の桜色に上気した顔をじっと観察しながら、緒方は憮然として呟いた。
「・・・ふん。苦痛がないならそれほど焦る必要もなさそうだな。
もっとも、苦痛がない、という程度でもなさそうだが・・・」
「おっ、緒方さ・・・はぅっ、あっ、あぁっ、離し、」
乱れた衿元から覗く明の薄い胸は激しく上下している。
そこに収められていた蛇図の御符を、緒方はぴらりと抜き取った。
「お、緒方さん!?何を・・・」
今起こった出来事が信じられなくて、明はハァハァと息を切らしながら緒方を見つめた。
――緒方の表情は読めない。
頼れると思った人物の意図が急に見えなくなって、とてつもない不安が胸に押し寄せる。
そうして御符が明の身体から離れた途端に、体内のクチナハが――
戒めを緩められたように急激に動きを強め、奥の一点を激しく突き始めた。
 
 


(50)
「あっ、あぁ・・・っ!・・・緒方さん返してください、な、中でまた動きが凄くなって、
・・・凄く擦られて、お、奥をぐりぐりされて、このままじゃ、
・・・あ、・・・ゃぁっ、・・・ぁあんっ、また・・・っ!」
「賀茂・・・許せよ!」
更に信じられない出来事が明を襲った。
緒方が明の単の裾を鷲掴みにして左右に大きく開いたのだ。
「あっ・・・!」
熱気と湿気が籠もった衣の中で既にこの上ないほど熱く昂り立っていたものが、
急に外気と緒方の視線の下に晒される。
欲望の形を慌てて隠そうとした瞬間、クチナハの頭部がぐりりと抉るように奥を突いた。
「い、いやっ、ァッ・・・アーッ!」
絶叫と共に淫楽に四肢を震わせ、緒方が見ている前で明は勢いよく精を放った。
・・・・・・

閉じた目を開けることすら出来ず、
恥ずかしさと情けなさと混乱でしゃくりあげている明の白い脚を、
緒方は膝の所から折って抱え上げた。
――何だろう。
この人はもしや、このまま己を犯す気ででもあるのあろうか。
そうだとしたら、何と云う人非人だろう。
いや、寧ろ物好きと云うべきだろうか。
クチナハの潜む場所に、自ら出向いてゆこうとは――
閉じた瞼の裏に光の姿がよぎり、知らず知らずのうちに涙が一筋頬を伝った。
 
 


(51)
僅かな空気の動きすら感じ取れるほど全神経を集中させたそこに、
くっと何かが押し当てられた。
「ンッ」
やはり、と息を呑み身を固くした明だったが、押し当てられた物はそれ以上進んで来ない。
「・・・・・・?」
明は恐る恐る目を開いた。
折り曲げられた己の脚の向こうで、
その脚を肩に載せ抱え上げた緒方が何か真面目な顔で覗き込んでいる。
「・・・どうだ?」
どうだとは――何の話だ。
手を伸ばして探ってみると、緒方の手によって何か乾いた薄い物体を
後門の入り口に押し当てられているのが分かった。
「・・・紙?」
「例の御符だ。おまえの体との距離が御符の効力に関係するなら、
つまりおまえの中に入ってるそいつに近いほど効くってことだろう。
だから、そいつに一番近いココに当ててみたらどうかと思ったんだが・・・」
「あっ・・・」
邪まな目的のためではなく己を助けるために、緒方はこんなことをしたのだ。
「す、すみません。ボク・・・」
「・・・中の具合はどうだ?」
 
 


(52)
云われてみると確かに、クチナハの動きは弱まっていた。
もはや明の内部を嬲ろうとする元気もないらしい。
苦しいのかピクッピクッと絶えず身をヒクつかせながら、
悶えるように不規則に長い身を蠢かせ続けている。
だが今までに比べれば格段に緩やかで、明を追いつめることを目的としないその動きが、
クチナハの淫液で疼く内壁を持て余す今の明にとっては
堪らなくもどかしいものに感じられた。
「・・・ふぁッ、・・・ゃぁあぁ・・・っ」
思わず喉から洩れた甘い声と共に、
もっと激しい動きをねだるように腰をくねらせてしまった己に驚いた。
――ボ、ボクは今何を。

そんな明を見た緒方の、御符を押さえつける指から怯むように力が抜けかかった。
「・・・逆効果か?止めたほうがいいか?」
「やっ、駄目ッ・・・!そのままにしてください!」
ぱっと緒方の指ごと、御符が入り口から離れないよう押さえつけた。
――こんな状況だと云うのに、快楽を求めるなどどうかしている。
たとえもどかしい感覚に苛まれようと、クチナハを弱らせ光が戻ってくるまでの
時間稼ぎが出来るなら、それに越したことはないではないか。
「・・・いいのか?そいつが苦しんでますます暴れたりはしていないか?」
「はい!御符のせいで弱っているようです」
「・・・なるほど。・・・とすると、今の声は・・・」
含みのある声で呟きながらチロリと見られて、明は頬を熱くした。
 
 


(53)
――見抜かれている。
今己が上げた声は、苦痛のためではなく更なる快楽を求めてのものであったことを。
嫌だおぞましいと云いながら、己の体は確実にクチナハの責めを悦んでいることを。
だが、本当にクチナハのせいだけなのだろうか?
先刻己は緒方に裾を開かれその視線の下に晒されて、
クチナハに奥を突かれた衝撃のためだけではなくこんなはしたない姿を
他者に見られているという興奮と刺激を十二分に味わいながら、
到達したのではなかったか。
緒方の意図を知らずに膝を抱え上げられたその時、
光を想って涙を流しながらもその先に来るもの――クチナハと緒方によって
与えられるだろう未知の悦楽を、焦がれるほどに熱望してはいなかったか・・・
疼く後門の入り口から、内部に満ちたクチナハの淫液が溢れ出し
戒めの御符の隙間を伝って尻肉の間の小径へと流れた。

「あッ・・・」
それは膚の表面を伝っただけで疼きを生む、魔の粘液だ。
特に敏感な部分というわけでもないのに膚が粟立つような疼きを覚えて、
明は思わず緒方の手を押さえていた指を離し、
ゆっくりと腰へ向かって伝い落ちていくそれを掬い取ろうとした。
「ああ、いい。オレが拭こう」
明の手を後門へ導き自分で御符を押さえさせると、緒方は傍らにある料紙を取った。
「・・・・・・」
カサカサと音を立てて料紙が近づいてくる気配がして、明はほっと目を閉じた。
クチナハの液を綺麗に拭き取って貰えれば、
この淫らな疼きは少なくとも後門の中より外には広がらないで済む。
 
 


(54)
だが、緒方は何を思ったか紙を当てる前に明の膚につぅっと指を滑らせ、
その淫液を掬い取った。
「お、緒方さん?」
「これは・・・ほう・・・なるほど」
明が見ると緒方は指に絡め取ったそれをヌチョヌチョと興味深げに弄んでいる。
「おまえがあまり善さそうにしているから、どんなものかと思ったんだが・・・
こんなのが中に入っているんじゃ、堪らんだろうな?」
にやりと笑いかけられて、明は顔から火が出るかと思った。
「ふ、ふざけていないで早く拭いてください・・・」
「はは、そうだな」
淫液を拭き取った後、緒方は別の料紙を当てて
明の腹や腿の上に飛び散った精液をも拭い取ってくれた。
今度こそほっと力を抜いた明だったが、
ふと見ると緒方は淫液がたっぷりと滲み込んだ先の料紙をじっと見ている。
嫌な予感がして後門の御符を押さえたまま起き上がろうとした明の肩を、
緒方が片手で床の上に押し戻した。
目が合った明にフッと笑ってみせ、そのままもう一方の手で淫液の滲みた料紙を
取った緒方に明は悲鳴を上げた。
「嫌です!緒方さん、やめっ・・・ヤァッ!」
「ふっ・・・一番感じる部分に当てなかっただけ、ありがたいと思えよ」
乱れた袷から覗く明の桜色の乳首の片方に淫液の滲みた料紙をきゅっと押し当てながら、
緒方は唇を歪めて笑った。
 
 


(55)
「折角助けに来てやったのに、妖しに取り憑かれた当の本人は
気持ち良さそうに喘いでやがる。しかも一発犯してやろうにも中には妖しがいて、
入れたら喰い千切られかねんと来た。一晩中生殺しでおまえについていてやるんだぜ?
もう少し目と耳の保養をさせてもらったところで、罰は当たらんだろう」
云いながら緒方は、もう片方の乳首にも被さるように料紙を広げた。
ぬめる料紙の上から、狂いそうに疼き始めた二つの小さなしこりをやんわりと揉まれ
明は大きく身を仰け反らせた。
「はあっ、ゃっぁあああっ!」
「いい声だ」
喉の奥で笑いながら緒方は料紙の上から指の腹を当て、
くるくると円を描くように優しく刺激した。
「はぁ・・・ぁふ、フッ・・・ゥ・・・ぅうー・・・」
魔の淫液がもたらす疼きと共に両の乳首を緒方の指で、
後門内部をクチナハの長い身で刺激され続ける。
明は全身をわななかせながら目を閉じ、遣る瀬なく首を振った。
開いた赤い唇の端から、涎が零れ落ちる。
後門で御符を押さえていた手の片方が無意識に上方のモノに伸び、
もう片方の手の指が御符の上から入り口周辺を刺激するようにじわじわと蠢き始める。

そんな明の乱れた姿に、
緒方は式の小鳥に激しくつつかれ髪をぶちぶち抜かれるのもそっちのけで
見入っていた。
 


(56)
「川に沿って行けば分かるって、云ってたな・・・」
童に云われたとおり夕暮れの山中を馬で分け入り、もうすっかり暗くなった頃――
前方に朧気な灯りが見えた。
いや、灯りではない。
近づいてみると、それは火のように赤く美しい、夢のような紅葉の群れだった。
光が馬から下りるとサラサラと清流の音がかそけく響く中、
赤い紅葉がひらりと一枚、遠い都からなずみ来た光を労うように舞い降りる。
それを手に取り、一瞬ここに来た目的も忘れて清らかな光景に見入った。
「・・・すげ・・・賀茂みてェに綺麗だ・・・」
水のように炎のように美しい想い人の幻が、夜の中に浮かんで光の胸を熱くした。
その時、
不意にガサッと枯葉を踏み分ける音がした。
「そこに居るのは誰や!」
びくりとして振り向くと、
そこには背の高い、白銀色の髪をした、水干姿の若い男が立っていた。

「あ・・・っオレ、オレは――」
美しい光景に見惚れて気が緩んでいた所を不意に見咎められて、光は焦った。
随分若いし、聖と云うより何だか普通の町人のような格好だが、
もしやこの男が件の聖なのだろうか?
白銀の髪の男は、切れ長の目で光を睨み据えながら厳しく続けた。
「この辺りは立ち入り禁止ゆうことになっとるんや!
この山を越えるより迂回したほうが次の国へ行くには早いから、
商人も官馬もここまでは登って来ォへん。アンタ、見たとこ都人みたいやけど
どないな目的でこんな山の中まで来てん。返答次第では、この場で――」
云いながら男の目に、ぎらぎらと人のものでないような光が宿り始めた。
 
 



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