初めての体験 Asid 49 - 56
(49)
ボクは、社の側に膝をついて、その身体を起こした。ボクに寄りかからせるようにして、
身体を支える。紙袋をたぐり寄せる。さっき、おもてで買ってきたモノが入っている。
社は、ぐったりとボクにもたれ掛かっていたが、ボクが取り出した物を見て不思議そうに呟いた。
「それ…包帯…?そんなん…どないするん……?」
もちろん手当に使う訳じゃない。社もそんなことを期待してはいないだろう。
その白く弾力性のある布を、社の切れ長の目にあてがう。
「あ…何するんや…やめてぇや…」
抗議の声を無視して、包帯を巻いていく。そうして、社の視覚は完全に封じられた。
身体の自由が利かない上に視界を塞がれ、社はかなり動揺していた。それが、身体を
通して伝わってくる。それに、まだ包帯を弄る音が彼の不安を余計に煽っているのだろう。
社の唇は白くなっていた。シュッと布を扱く短い音が、社の耳にはどんな風にきこえて
いるのだろうか。
ボクは、社の両手首を取ると、前で交差させて包帯で堅く縛った。
「なぁ…なんで…」
社が、ボクに問いかける。ボクは、そのうるさい口も包帯で塞いでやろうかと思った。が、
喘ぐような社の関西弁が意外と色っぽかったので、そのままにしておくことにした。
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社をゆっくりと畳の上に寝かせた。改めて全身を眺める。…………………いい感じだ。
見た目もコレでばっちりだ。包帯で目隠しをされる進藤を想像して、ドキドキした。
社の首筋をゆっくりと撫で上げた。その途端、彼の身体が大きく震えた。身体が動かなくても、
一応感じてはいるらしい。効き目が少し薄れて来たのかもしれない。反応がないより、
あった方が楽しいので、コレはコレでかまわない。
ボクは調子に乗って、いろんなところを触りまくった。その度に、社が小さく喘いだ。
「はぁ…!い、いややぁ…」
身を縮めようとする社を妙に可愛く感じて、ボクの方が狼狽えた。
「社、可愛いね…もしかして、初めて?」
社は否定も肯定もしなかったが、こんな目にあわされたのは、初めてなのに違いない。
答えない社の肩の近くに、スタンガンをかざした。触れるか触れないかのところで、
バチバチと火花が散った。
「!!」
直接触れてはいないはずだが、彼は身を竦ませた。やはり、視覚を奪われると恐怖心も
倍増するらしい。
「ボクは、素直じゃないヤツは嫌いだ…言っている意味わかるよね?」
優しく囁いた。笑顔のオプションもつけたが、社に見えないのは残念だ。
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大人しくなった社の肌に唇を寄せた。脇腹を撫でながら、乳首を舐めた。
「…アァ!い…いややぁ…」
社が、身を捩ろうと藻掻いた。ボクはすかさず、スタンガンのスイッチを入れた。その
途端に彼は静かになった。ボクは行為を続けた。乳首を強く吸い上げると、彼の身体は
震え、断続的な喘ぎ声を上げた。
「あぁ…とうや…アカン…」
掠れた声が色っぽい。もっと、声を上げさせたい。
ボクは、自分の指をしゃぶった。社に良くきこえるように、出来るだけ大きな音を立てた。
そのピチャピチャという音が、響く。それが、何を意味しているのか、社にはわかって
いるようだった。身を縮めようとしていたが、スタンガンのスイッチの音に反応して
抵抗を止めた。怯えながらも、ボクの指をその身に受け入れた。なるべく痛くないように、
気を使っているって言うのに…いきなり突っ込んでやろうか?スタンガンとどっちが
いいんだ?
ボクは、社がボクに逆らうようなそぶりを見せる度に、それを繰り返した。やがて、社は
ボクに反抗するのを止めた。ボクが彼の頭を膝に抱え、ペニスをその口元に押し当てたときでさえも
躊躇いながらも、それを口に含んだ。包帯が少し濡れている。その拙い口淫と涙は、
ボクの加虐心を少し満足させた。
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社は、完全にボクの手の中に落ちた。ボクが彼の下肢を抱え上げたときは、さすがに、
一瞬身体を強張らせたが、すぐに諦めたように力を抜いた。
「やっと、物わかりが良くなったね。」
耳たぶを噛むようにして、囁いた。社の身体が震えたのは、恐怖からだけではないだろう。
その証拠に、身体の中心にあるモノは、形を変え始めていた。
ゆっくりと身体を進める。
「ア、ア、い…いた…」
社が、身体を仰け反らせた。逃げようとする腰をしっかりと捕らえて、自分の方へ引き寄せた。
「あ、ああああぁぁ―――――――――!!!!」
社の口から、悲鳴が漏れた。
かまわず身体を揺すった。社は、歯を食いしばって、痛みに耐えている。額に脂汗が
浮かんでいた。
うーん……痛くするだけじゃ可哀想だから、そろそろ気持ちよくしてあげた方がいいかな。
ボクは、動きを緩やかなものに変えた。そうしながら、社の髪を優しく梳いた。社が
驚いたように、ボクを見上げる。その両目は、塞がれたままだが、信じられない物を見るような
表情だ。
額や頬、首筋も優しく撫でた。社の唇からでる喘ぎ声は、苦痛から快感へと変化しつつあった。
その唇に、キスをした。舌をからめ取り、吸い上げると、身体が切なげに震えた。
「はぁ…あ、あ、あ…ん…」
その声に煽られるように、ボクは腰を動かした。
「ん…あぁ…ア、アア、あ―――――」
社の身体から、静かに力が抜けていった。
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社の服を整えて、壁に寄りかからせる。まだ、辛そうだが、まったく動けないわけでは
ないようだ。ぼんやりと、ボクが身支度を整えるのを見ていた社が問いかけてきた。
「……あんた…進藤にも…こんなことする気なんか?」
『キミには関係ない!』と、言ってやろうかと思ったが、止めた。社は進藤が好きなのだ。
ボクが、進藤を自分がされたような目にあわせるのではないかと心配している。
「心配いらないよ…進藤を傷つける気はないから…」
進藤に出来ないことを、余所で発散させているのだ。進藤を泣かせるようなことするわけ
ないだろう?もう一回泣かすぞ!
それに、散々楽しんだあとでこう言うのもなんだが…スタンガンはボクの目指す物から
どうも外れているような気がする。なんというか…上手く言えないが…ボクはもっと、
芸術性を追求したいのだ。確かに、包帯にはそそられたが、スタンガンはまた使いたいとは
思わない。もともと、進藤の自衛のために手に入れたのだ。だが、こんな危ない物を
進藤に持たせるわけにはいかない。奪われたら、彼が危険だ。
ありがとう社……直接口には出さないが、本当にキミには感謝している。
キミのお陰で、進藤の危機を回避できたよ。スタンガンは危険だ。危ないヤツが持つと
とてつもなく恐ろしい武器だ。それが、よ―――――っくわかった。進藤のか細い腕では、
間違いなく相手に奪われ、餌食になる。
ああ、そろそろ帰らなければ…進藤が待っている。俯いている社に、声をかけた。
「今日、帰るんだろ?何だったら駅まで送っていこうか?」
最後の嫌がらせだ。
「……ええわ…遠慮しとく…ちょっとしんどいし…ここで休んどくわ…」
社が力無く首を振った。…………しんどい……か…。なるほどね。
「そうかい?それじゃあ、北斗杯楽しみにしてるよ。」
ボクは社に、笑いかけた。そして、彼を置いて棋院を後にした。
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帰る途中、ボクはスタンガンから電池を抜いた。部品を壊して、そのまま不燃ゴミと
して捨てた。ヘタに捨てて、バカに拾われて悪用されたら寝覚めが悪い。社が知ったら、
「悪用しとるんは、アンタや!」と、ツッコミが入るかもしれない。まあ、どーでもイイ
話だな。
ボクが家に戻ると、進藤が奥から駆け出して出迎えてくれた。
「おかえり!もぉ、遅ェよ…」
「ゴメン…」
進藤が、ボクに抱きついてきた。
「この家広いんだもん…オレ、ちょっと寂しかった…」
ああ…本当に可愛い。こんな可愛い進藤に、スタンガン…ダメだ…出来ない。そんなことの
出来るヤツは、鬼か悪魔だ。
ボクにしがみついている進藤の指に、幾つも絆創膏が貼られていた。
「進藤、手をどうかしたの?」
進藤は、ボクから手を離した。赤くなって、モジモジとしている。
「オレ…晩メシ作ったんだ…カレーなんだけど…塔矢、カレー好き?」
進藤が食事を!?進藤が作った物に文句などあるわけがない。泥団子だって食べてみせる!
「インスタントラーメン以外は、カレーぐらいしか作れネエんだ…」
と、照れくさそうに言った。
ああ、そんな顔しないでくれ。心臓を直撃だ!ボクは、カレーよりキミが食べたい!
だけど、進藤の心遣いを無下には出来ない。最初はカレー、次にキミを食べさせてくれ。
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進藤のカレーは、ちょっぴり焦げていた。だが、ボクにとっては満願全席よりすごい
ごちそうだった。
「焦げちった…ゴメン…塔矢…」
進藤がしょんぼりとボクに言った。
「気にする程じゃない。十分おいしいよ。おかわりしてもいい?」
進藤はうれしそうに笑った。その笑顔だけで、三杯はいけるよ。 四ヶ月間耐えた甲斐が
あった……。幸せだ。
「オレ、ずーっとオマエに会いたかった。」
「ボクも…」
いつもなら、縛られたり泣かされたりしている進藤を思い浮かべるところだが、今日は
そんな気にならない。目隠しされた進藤よりも、指を絆創膏だらけにしている進藤に
ドキドキしていた。
その指先がボクの髪を梳いて、首を抱え込む。柔らかい唇にキスをした。久しぶりに
触れた唇は、ボクを芯からとろかすほど甘い。進藤はその大きな瞳を潤ませて、ボクに
何度もキスを強請った。ボクは、それに逆らえない。逆らう理由がない。彼の望むままに、
キスを繰り返した。
何度も夢に見た進藤の滑らかな肌の感触や、甘い体臭を確かめる。何ヶ月も離ればなれで
いられた自分が信じられない。
「ふぅ…あぁ…」
ああ…進藤の声だ。ボクの耳を通り、脳から全身に伝わる。身体が痺れそうだ。
「…とうや…して…」
ボクを誘う声。一気に熱が上がる。
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進藤の足を大きく開いた。
「は…あ…」
ボクが、少しずつ身体を進めるごとに彼は苦しげに喘いだ。進藤の傷だらけの指に、自分の
指を絡めて固定する。そのまま、一息に突き入れた。
「あぁ…!とうやぁ!」
目が眩みそうな快感が全身を包んだ。社としたときに感じた凶暴な快感ではなく、優しくて
穏やかな感情が胸に溢れた。だが、身体の方は、進藤を欲して止まない激情に流されそうだ。
進藤を責め立てる動きが激しくなる。
「はぁん…アア…とうや…とうや…」
涙を流しながら、激しく首を振る。
「と…や…オレ…もう…」
「ボクも…」
進藤が強くボクを締め付けた。その瞬間、ボクは進藤の中に放っていた。
眠っている進藤をジッと見つめた。相変わらず、可愛らしい寝顔だ。ボクの手を握りしめている
絆創膏だらけの指にキスをしたとき、はだけた胸についている小さな飾りが目に入った。
「ここにも、貼ってみたい…」
と、無意識のうちに呟いていた自分に愕然とした。
やっぱりボクは、ボクだ。どんなに、進藤を愛しく思っても、ボクの根っこには、
それしかないようだ。だが、進藤相手に無茶は出来ない。
「北斗杯…楽しみだな…」
社が相手なら、いろいろ無茶も出来そうだ。同じチームだから、ボクを避けるわけにも行かないだろう。
進藤を腕に抱きながら、ボクの心は北斗杯へと飛んでいた。
おわり
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