無題 第2部 5


(5)
門はかたく閉ざされていた。
彼の知る限りでは、こういう事は今まで無かった。都内とは思えない、広い純和風の屋敷
には、来客も多く、その門はいつも開放されていた。
誰かしら門下生が来ており、賑やか、というのとは少し違うが、それでも活気のある家だった。
その家が、しんと静まり返り、門も閉ざされている。
彼は不安になった。家の主がこの家を離れて海外にいる事は知っている。その留守を預かっ
ている筈の少年が、病気であるらしいと聞いて、見舞いに来たのだ。
彼が手合いを休むくらいだから、かなりひどいのではないか、そうは思っていたが、この家の
様子は彼を更に不安にさせた。
そして、可哀相に、と思った。こんな広い屋敷に独りで、病に伏しているであろう少年を想像する
と心が痛んだ。もっと早く連絡してくれれば、来てやったのに。
門のベルには応答が無い。
寝ているのだろうか。そうだとしても、独りでいる筈の少年を放っては置けない。そう思ってベル
を鳴らし続けた。
何度か鳴らし続けた末に、やっと、屋敷の奥で応えがあった。
「どなたですか…?」
若干、不機嫌そうな声が遠くで尋ねる。
「…アキラか?大丈夫か?様子を見にきたんだけど…」



TOPページ先頭 表示数を保持: ■

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル