少年王アキラ? 5
(5)
「なるほど」
「いいかい? 拙いテクニックながらも、それを上回るアツイ情熱で口を塞ぐん
だ。――こんな風に」
オガタンは軽く少年王の薔薇の唇に自分のそれを触れさせた。素早い動きだが、
オガタンの唇は的確に目標を捕らえる。
「あっさりキスされてもつまらん。意表を突け」
「わかった」
アキラ王はすぐに納得した。確かに今のは全く、全然ときめかなかった。
「今のは悪いお手本なんだね。意表を突けばいいんだな」
オガタンは背後に庇ったパソコンのディスプレイをチラチラと気にしている。
「じゃあな、これでいいだろう。オレは忙しいんだ」
苛々とした様子で吐き捨てると、オガタンは自分の執務椅子に腰掛けてマウス
を手繰り寄せた。だが、少年王の目を気にしているのか、一向にウィンドウを開
けようとはしない。
「あ、ねえオガタン」
「なんだ」
「ボクをハマグリゴイシの背に乗せて」
自分で乗れない歳でもないだろう。オガタンは肩を落としたが、この程度のワ
ガママはかわいいものだと思い直す。少年王は自分への愛情を図るために、ちょ
くちょく小さなワガママを仕掛けてきては安心するのだ。
|