裏階段 三谷編 5


(5)
火傷の痕は痛々しいとは思ったが、可哀想だとは感じなかった。
彼が自分の体に負ったものは彼の事情だ。こちらには関係がない。
傷がつけられる前に救ってやれなかったのなら同情は意味がないのだ。
耳たぶに唇を寄せると微かにコロンの香がした。安っぽい匂いだったが悪くはなかった。
塞がりかかったピアスの穴の痕があった。軽く噛んで舐めてやった。
「最近の高校生は随分オシャレなんだな。」
温度の低い肉片から首筋へとキスを移動させる。
「…無理矢理開けられたんだ。ヤだって言ったのにさ。」
確かに彼の華奢なパーツ一つ一つは顕微鏡で見た繊細な雪の結晶のように思わず無骨な指で
粉々にしてみたくなる衝動にかられる。
「相手は穴を開けただけでピアスは買ってくれなかったのかい?」
「変態野郎だったからな。他のとこにも穴を開けたがったから逃げた。」
「…賢明な判断だったな」
余分な会話をさせたおわびに彼の顎に手をそえて丁重に彼の唇にキスをする。
はじめのうちはソフトに触れあわせる程度にした。その間、節目がちではあったが彼は
目を閉じようとはしなかった。ただやはりこちらと視線は合わせようとはしなかった。
直前まで噛んでいたガムの味がした。徐々に重なる部分を増やして舌を送り込む。
「ん…」
向こうの舌を捉えて激しく吸いたててやるとようやく目蓋を強く閉じてそれらしい表情と
吐息になった。彼の口の中から吸い取っただ液を返すように押し込んでやると
意に介さず彼はそれを飲み下した。
そうなりながら彼の手が動いてこちらのシャツのボタンを外しにかかる。
その両手首を掴んでベッドに押さえ付ける。
先刻までよりは幾らか彼の体温が上がり呼吸が荒くなっていた。
火傷の痕が残っている方の小さな突起を脇からすくうように舐めてやった。
ピクリと一瞬彼の体が浮き上がって小動物のような小さな鳴き声が聞こえたような気がした。



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