四十八手夜話 5
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「そんなことない! ないってば!」
ヒカルは慌てて、隣りに置かれた紙の束に手を伸ばした。まぁ、アキラがそこまで
自分との関係を大事に思ってくれているのは嬉しいし、ヒカルだって、なんだかんだ
いいつつ、アキラと思う存分欲情を吐きだせるこの夜を楽しみにしていたのだ。
それからは結構楽しかった。二人して並んでその四十八手を検討(?)し、ああでも
ない、こうでもない、ほんとにこんな体位できんのかよ、と笑い声も上がったりして、
とりあえず十五の体位を選びだした。
中には「これはなぁ、女のあれがあそこについてるから出来るの!男同士で後ろ使うん
だったら絶対無理!」と、アキラが推したのにヒカルに強硬に却下されたものもあった。
「よし、順番を決めよう」
「へ?」
「十五もあるんだ。だいたい僕は三回ぐらいが限界だし、君もそのぐらいだろう。
一回につき五つの体位を試せる」
「別にいいよ、適当にやろうぜ」
アキラが再び、ヒカルを睨んだ。
「そこに座れ、進藤」
「…はい」
「そもそも君は、初めて一緒に寝た時からして泣きわめくばかりだったし、今だって
事が始まってしまえば、喘いで僕にしがみつくのでせいいっぱいだろう」
随分卑猥なセリフなのだが、まるで保健体育の先生に居眠りを見つかって怒られて
いるときのような気がするのはなぜだろう。
「きちんと順番を決めてメモしておかなければ、絶対にこれを全部やり遂げることは
不可能だと思うが、どうだ?」
反論のしようもございません、とヒカルは心の中でつぶやいた。
ヒカルが神妙にしているようなので、アキラは鞄からペンを取りだして計画を
メモし始めた。順番は以下の通りだ。
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