Cry for the moon 5


(5)
イカリング、軟骨のから揚げ、シシャモ、ピザ、ジャガイモの団子、その他もろもろを
並べると、進藤たちは勢い良く食べ始めた。
「三谷も食えよ。おごりだぜ」
口にアスパラの豚巻きを詰め込みながら進藤は言う。
「進藤、金を出すのは俺たちだぞ」
「だいたいこの中で一番お金を持ってるのって進藤だよね。賞金いくらだっけ」
「えーと、忘れちゃった。それに税金で持ってかれるからそのままの額もらえるわけじゃ
 ねえしな。あ、オレもずく嫌いだから和谷にやるよ」
「嫌いなもん寄こすなよ!」
こうして見ると、プロ棋士と言ってもぜんぜん普通のやつと変わらない。
枝豆をつまむ。ちっ、やっぱりビールを注文すればよかった。水じゃうまくない。
でも仕事中だしな。ああ、でも店長も大目にみてくれるか。
そんなことを考えてると階段を駆け上る音が聞こえてきた。
「遅くなってゴメン」
「あ、やっと来た。座れよ」
振り向いて俺は驚いた。あの塔矢アキラじゃないか。
こんなやつとまで進藤は仲いいのかよ。
塔矢アキラは静かで温和そうな顔をしている。だけど俺は知っている。
進藤相手に取り乱したことを。
あれは俺と進藤の二人が出た最初で最後の、囲碁部の大会。
こいつはヘボの進藤に熱くなって、何か叫んでいた。バカかと思った。
あのころの進藤は俺よりも弱かった。その進藤に何を期待してるんだって思った。
けど、こいつは俺にはわからなかったことをわかっていたんだ。
「進藤、それは酒じゃないのか」
「うん。かたいことは抜きにしようぜ。ハイ、これおまえの」
「……ウーロン茶じゃないか」
「だって塔矢は酒を飲むなって言うくらいなんだから、自分は当然、飲まないだろ?」
「ボクも飲む」
ムキになってるのがはたからでもわかる。進藤は人を自分のペースに巻き込むのがうまい。
誰が相手でも少しも躊躇しない。
進藤は見かけは大人っぽくなって、背もかなり伸びたけど、中身は変わっていない。
だからか。あのころのことを思い出してしまうのは。



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