初摘み 5
(5)
アキラは普段甘い物は食べない。このケーキもヒカルのためだけに買ったのだ。
「塔矢…食べネエの?」
大きな目がアキラを覗き込んだ。その唇に素早くキスをした。甘いクリームの味がする。「ボクは、こっちの方がいい。」
ヒカルは、顔を真っ赤にして、口をパクパクさせた。そこから覗く舌が、クリームより
甘かったのは、確認済みだ。
狼狽えるヒカルが可愛かった。ヒカルが、これからアキラがしようとしていることを
意識しているのはわかっている。そのせいで、ちょっとしたアキラの悪戯に振り回されている。
いつもの自分と立場が逆転しているのが可笑しくて、吹き出してしまった。
「ひでえよ…塔矢…オレのことからかってんの?」
ちょっと涙ぐんでいる。悪戯がすぎたらしい。初なヒカルに、こういう免疫がないのを
知っていながらも、返ってくる反応が可愛くてついやりすぎてしまった。
「ゴメン…ちょっと浮かれてた…」
ヒカルの額に自分の額を押し当てた。ヒカルの大きな瞳と視線をあわせる。
「うん…」
ヒカルが笑顔を見せた。
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