平安幻想秘聞録・第一章 5


(5)
 結果は、後番の佐為の三目半勝ちだった。もっともこの時代にはコミ
のルールはまだないから、逆にヒカルの二目勝ちになる。それに、序盤、
佐為はヒカルの力を見るためか、本気で打っていなかったように思えた。
「どう、かな?オレ・・・」
 恐る恐る伺うヒカルに、佐為が満面の笑みを浮かべて頷いた。
「とても、とても強いと思います。ほら、ここの手など、私には思いも
つきませんでした。ここをうまくのぞかれて困りました」
 それでもその攻めを凌いでいった佐為はやはりすごいと思う。久しぶ
りに見た佐為の一手、一手に、ヒカルは感嘆のため息を零しそうになっ
たくらいだ。
「近衛よりも強いよ。僕ではとても勝てないな」
「そう、なんだ?」
 自分より弱いアキラ、いや明というのは想像がつかなかったが、ここ
での明は陰陽師が本来の仕事で、碁はあくまでも貴族としての嗜みなの
だろう。それに、平安から平成まで、千年もの間に産み出された定石を
知ってるヒカルの方が強くても不思議ではない。
「佐為、ありがとう。オレ、佐為と打てて、嬉しかった」
「いいえ、お礼を言うのは私の方ですよ。とても楽しい一局でした」
 視線を上げた先に佐為のいる幸福。それを思うと、ヒカルは胸の奥が
熱くなるような気がした。
「そうそう、光。おなかは空いていませんか?」
「あっ、言われてみれば、すごく腹減ってるかも・・・」
「ふふ、すぐに夕餉の支度をさせましょう。明殿もぜひを召し上がって
行って下さいね」
「はい、お言葉に甘えさせていただきます」
 平安の食事というのはヒカルが思っていたのより質素で味も薄口だっ
たけれど、お腹が空いていたせいか、充分おいしかった。さすがにラー
メンはないよな、この時代には。秀策がいた時代にだってないはずだ。



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