りぼん 5


(5)
机のかげに隠れて、オレと塔矢はキスをした。正確にはされた、だけど。
唇がはなれると、塔矢は「もう一度いいか」って聞いてきた。
ったく。いいわけないだろ。こんなところで、こんなことすんなよ。
そう思うけど、顔を寄せてくるコイツからオレは逃げないばかりか、目も閉じた。
柔らかい感触にくらくらする。舌がものすごく甘い。
塔矢の手がオレの背中をなでて、腰のラインをたどってくる。
「……っ……ん……」
声が出そうになる。おい、そんなに吸うなよ、苦しいだろ。
オレも同じように塔矢の唾液と息を吸う。お互いの呼吸がだんだん乱れてくる。
いつのまにか塔矢の手が背中にまわって、引き寄せるように強く抱きしめてきた。
自然にオレの手が塔矢の頭を抱えこむ。もう理性なんてどこへやら、だ。
「アキラくーん、進藤くーん? どこにいるの?」
遠くから市河さんの声が聞こえてきた。オレたちはとっさに離れる。
そのときピチャッて小さな音がして、二人そろって赤くなった。
ああ、もうホントにオレたち何やってんだろ……。
「どうしたの、アキラくん」
「碁石を落としてしまったので拾っていたんです」
「えっ、大変! 石は割れてない?」
「大丈夫みたいです。後で洗いますね」
アキラくんはそんなことしなくていいのよ、と市河さんが言う。
オレは碁石を拾いながら、唇が濡れてる気がして袖でゴシゴシとこすっていた。
それを塔矢が見て、露骨に顔をしかめた。違う、イヤだったからじゃないぞ。
「……プレゼントは今のでいいよ」
ふてくされてる。なんかさ、こういう塔矢ってカワイイよな。
やっぱりオレ、コイツが好きだって思う。
「市河さん、デンワ貸してくれる? 家にかけたいんだ」
驚いてオレを見る塔矢の耳に、オマエの家に泊まるから、とささやいた。
そしたら塔矢はすごくうれしそうに笑った。なんかくすぐったい。
オレなんかでよければ、いくらでもやるよって気分になった。



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