番外編1 Yの悲劇 5
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ニヤリと笑った細い目が自分の方に近づくと、意外に手強い力で隣の部屋に体
を押した。
襖のむこうには準備よく布団が延べられている。
ここで寝ろということか。朦朧とした頭では、食事をした部屋の隣に布団があ
ることが、まったく不自然に思われなかった。
上着を脱いでそのまま布団に入ろうとすると、桑原はシャツのボタンを外そう
とする。申し訳ないと思いながらも、なにか言うのも億劫でなすがままにまか
せる。布団に横たわり、ズボンも靴下も脱がされ、何かがおかしいと感じたの
はその手がブリーフにかかった時だった。
「あうっ、ヤメロ」
叫ぼうとするが、言葉になったかどうか、わからなかった。
力のきかない体からたやすく下着は剥がされた。
小柄な体に似合わぬ大きな手が、嘉威のうなじを這い回り始めた。
ヌメリとした桑原の唇が嘉威の唇をふさぐ。熱い舌が歯列を押し入って口腔の
そこかしこを愛撫していく。
これはおかしい、やめてくれ、思いながら嘉威は前にも増して呼吸が荒くなっ
てくるのを感じた。
熱い舌は耳朶から乳首、脇の下と次第に下方へ移動していく。
「うっ、…ふぅ…」
体が熱くなってくる。
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