カルピス・パーティー 5 - 6


(5)
小さな四角いテーブルの上にゴトゴトと並べられた壜は全部で6本。
それらの脇に半透明なプラスチック製の使い捨てコップを袋に入ったままどさりと置いて、
ヒカルはアキラのほうを窺った。
アキラは興味深げに一本一本を手に取っては、ラベルの部分を白い長い指でなぞっている。
対局中とまるで変わらない真剣な眼差しが、手元の文字に集中するあまり寄り目気味に
なっているのをヒカルは微笑ましい気持ちで見守った。

「りんご・・・マスカット・・・色々な種類があるみたいだけど、全部カルピスなんだ?」
「ウン。オマエ前に、カルピスは普通の白いやつしか飲んだことないって言ってたろ?
他のも飲ませてやろうと思って、買っといた」
「え、そうなんだ?進藤・・・ありがとう」
さっきまで伏し目勝ちにラベルの文字に注がれていた視線が急に自分のほうを向いたので、
ヒカルは少し照れて目を逸らした。
「よ、よく見とけよな!それ全部種類違うんだぜ。フルーツのと・・・、普通の白いのもあるし」
「うん、こんなに種類があるなんて知らなかった。これ、どれを開けるかボクが選んで
いいのかい?」
「エ?何言ってんだよ。全部開けちゃおうぜ」
ヒカルは当然という顔で言った。アキラが少し驚いたように瞬きをする。
「・・・6本とも開けるのか?キミとボクの二人しかいないのに?」
「ウン。いーだろ?別に。飲み切れなかった分は冷蔵庫入れとけばいいし。ホラ、これ
オマエの分な」
言いながらヒカルはガサガサとコップを幾つか袋から取り出し、アキラに渡した。


(6)
「待て、進藤。コップをこんなに使うのか?」
手渡された使い捨てコップの数を数えてみてアキラが言った。
「エ?だって6本とも種類が違うんだから、全部味見するのに同じコップ使ったら
味が混ざっちゃうだろ」
「それはそうだが・・・何だか勿体ないな。進藤、普通のコップで飲まないか?もしキミが
後片付けが面倒なら、ボクが洗うから」
「えー?ウーン・・・ヤダ」
言ってから、しまったと思った。アキラの美しい眦が見る見る吊り上がり、厳しい視線が
ヒカルを真っ直ぐに捉える。
(ヤベッ。始まる)
「進藤。何故キミは、いつもそう――」
「あー、違う違う、メンドーだからとかじゃなくて!・・・こっちにあんまり食器置いて
ねェんだよ。茶碗とか全部足しても数足りねェし、別の種類飲むたびにいちいち洗って
使うってものめんど・・・じゃなくて、どうせなら全部並べて味比べしてみたいしさ」
「なるほど」
アキラがあっさり納得したので、ヒカルはカクッと拍子抜けしてしまった。
「そういうことなら、ボクとしてもこのコップを使うのに異論はない。・・・でもやっぱり、
少し勿体ない気がするな・・・」
呟きながら思いつめたように手の中のコップを凝視しているアキラを見て、ヒカルは
頭を掻いた。
(相変わらずなんてゆーか・・・細かいこと気にするヤツだなぁ・・・)
「あ、そうだ!それじゃ、」



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