敗着 5 - 6


(5)
塔矢と抱き合い、お互いを確かめ合い、
じゃれ合うようにシャワーを浴びて─。
アキラの髪に指を通し、唇を合わせた時、
「愛しい」
そう感じた。
「お、お前は、塔矢をっ」
勢いに任せて言葉が口をついた。
「─フン。お前呼ばわりとは、オレもナメられたもんだな。」
緒方が上体を起こす。目が据わっている。
「あ・・・、」
ヒカルは気が付いた。だけどひるまない。
「お前、塔矢と、あんなことしてんのかよっ!」
「あんなこと?」
白々しく訊き返してくる。
「だから─、その・・・」
言葉にするのは憚られ、顔が上気してくるのが分かる。
「こういうことか?」
ハッと顔を上げると緒方の顔が近くにあった。
「お前はアキラくんと、こういうことをして─?」
詰襟と耳との僅かな隙間を指が滑る。
途端に身体が硬直する。
思い出した─。この人と、こうして向かい合ったのは、あの夜─。
そう、佐為がいて─。
だけど─、この人は─、今日は酔ってはいない。


(6)
「だったらどうだと言うんだ?お前も楽しんだ。
 アキラくんも楽しんだ。何か不満があるのか?」
口の端で笑い、再び上体を沈める。
ヒカルは怒りが込み上げてきた。
軽くあしらわれたからではない。
こいつが─、塔矢と─。
「アキラくんは─、」ふと部屋の隅のドアの方に目をやる。
「物覚えがいい。」
と、ヒカルの方に向き直ったところでヒカルが立ち上がった。
「てめえ─!」
怒りで肩が震えている。
「・・・言っておくが、アキラとはお前よりも付き合いが長い。
 そして、アキラも拒まなかったとしたら─?」
「え・・・」
いきなり我に返った。
そうだ、塔矢だって─、という考えが一瞬頭をよぎった、が
(進藤)
朦朧とした意識の中で何度も呼ばれた自分の名前。
(塔矢─、オレ)
「塔矢に、あんなことするなよっ!」
言い切った。



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