四十八手・その後 5 - 6
(5)
『ヒカル、塔矢はこんなものを見てるんですか?』
『だって、検索したらここに来ちまったんだもん』
「よんじゅうはちて」じゃなくて「しじゅうはって」って読むのか。
そりゃ俺だって男だから、こういうのに興味がないってわけじゃない
けど、あの塔矢がって考えると、似合わねーって思っちまう。
でも、良く見ると、これとこれって、俺が塔矢にやられたやつだよ。
うわー、何だかこうやって改めて見ると、すげー恥ずかしい。俺の知ら
ない世界って感じだよ。
これを調べてたってことは、まさか、塔矢の奴、これ全部を制覇しよ
うなんて考えてないよな。でもなー、塔矢って確かAB型だろ?AB型
って完璧主義だって聞いたことがあるような、ないような。うーん。
「進藤、ごめん。お待たせ」
帰って来た塔矢に、慌ててページを落とす。
「どうしたの?」
「ううん、何でもない、何でもない」
「そう?」
じゃあ、さっきの棋譜の検討でもする?と碁盤の前に座った塔矢に、
ほっとした。あー、何か、刺激の強いもんを見ちゃったよー(^^;
『ヒカル、しっかりして下さい』
『だって、佐為ー』
『よそ事を考えてると、また塔矢にふざけるなーって怒鳴られちゃいま
すよ』
そうなんだけど、気になっちゃって、ダメだよー。
「進藤?具合でも悪いの?」
「えーと、あの・・・」
(6)
「と、塔矢!」
「何?」
「今日は、夜になったら塔矢先生とお母さんは帰って来るのか?」
「来ないよ。今日は泊まり、帰って来るのは、明日の夕方かな」
そんなにお父さんと会いたかったの?なんて、困ったような顔を塔矢
はしてるけど、そうじゃないんだってば。
「えーと、あのさ、だったら、俺、今日、泊まってってもいいか?」
「えっ?」
「だからさ、その、今夜は塔矢しかいないんだろ?(///)」
「それって、あの、でも、僕の考え過ぎかな」
考え過ぎじゃなくて、そうなんだよ。だって、このまま帰ったら、俺、
絶対夢に見そうだもん。だったら、やっちまった方がいいじゃん。
『ヒカルーーー!?』
って、佐為が目を回してるけど、真っ赤になってないで、お前の答え
はどうなんだよ、塔矢!
「塔矢、嫌?」
「嫌じゃ、ないけど、でも・・・」
「でも、何?」
「君を目の前にしたら、約束を守れる自信が、なくて」
「約束って?」
「君が嫌がるようなことはしないって」
「じゃあいいじゃん。俺が嫌がらなけりゃいいんだろ?」
なっ!て、俯いたままの塔矢の顔を下から覗き込んだら、ぎゅーっと抱
き締められて、優しいキスをされた。
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