少年王アキラ? 5 - 7
(5)
「なるほど」
「いいかい? 拙いテクニックながらも、それを上回るアツイ情熱で口を塞ぐん
だ。――こんな風に」
オガタンは軽く少年王の薔薇の唇に自分のそれを触れさせた。素早い動きだが、
オガタンの唇は的確に目標を捕らえる。
「あっさりキスされてもつまらん。意表を突け」
「わかった」
アキラ王はすぐに納得した。確かに今のは全く、全然ときめかなかった。
「今のは悪いお手本なんだね。意表を突けばいいんだな」
オガタンは背後に庇ったパソコンのディスプレイをチラチラと気にしている。
「じゃあな、これでいいだろう。オレは忙しいんだ」
苛々とした様子で吐き捨てると、オガタンは自分の執務椅子に腰掛けてマウス
を手繰り寄せた。だが、少年王の目を気にしているのか、一向にウィンドウを開
けようとはしない。
「あ、ねえオガタン」
「なんだ」
「ボクをハマグリゴイシの背に乗せて」
自分で乗れない歳でもないだろう。オガタンは肩を落としたが、この程度のワ
ガママはかわいいものだと思い直す。少年王は自分への愛情を図るために、ちょ
くちょく小さなワガママを仕掛けてきては安心するのだ。
(6)
少年王をひょいと横抱きにすると、その勢いでオガタンはくるりと一回転して
みせる。
慣れたもので、ハマグリゴイシも上手い具合に着地点にスタンバイしていた。
「あのね、オガタン」
「まだなんかあるのか」
些かうんざりしたように溜息を吐くが、それでもオガタンはこの愛くるしい少
年王の乱れたおかっぱやはだけられたパジャマの上着を正してやる。
異星に流れ着いて15年。そんな風にして彼はこの星の若き主を見守ってきた
のだ。この星でのオガタンの歴史は、そのまま少年王との歴史でもあった。
「本選でね、ボクがレッドのハートを確実にゲットできるかどうか…見てて欲し
いんだ」
ハマグリゴイシの長い首に抱き着いて、少年王は可愛らしく小首を傾げて見せ
る。いつものオネダリのポーズに、オガタンは悩殺されそうになった。
だが、オガタンはある単語に過剰に反応してしまう。
「本選、だと……?」
「ウン」
アキラ王はこっくりと頷き、『これは命令と受け取ってもらっても構わないよ』
なんて鬼畜なことを言い出した。
(7)
しかし、他の者なら震え上がるような少年王の独裁ぶりも、もともと父王に仕
えていたオガタンにはあまり影響を与えない。ゆるくかぶりを振って、オガタン
は溜息を吐いた。
「キミは一体どんな神経をしてるんだ。人がどれほど今日という日をナイーブに
過ごしているか――」
オガタンはそこで絶句すると、壁に表示される時間を確認し、意外なことに
「ぎゃっ」と短く叫んだ。
ナイト兼少年王主治医兼愛玩具のオガタンにしては、あまりにも酷い叫び声だ。
少年王は自分の耳を疑ってしまった。
(なんだ、今の声は)
「しまった、オレとしたことが」
少年王がどこから聞こえてきた声なのかと周囲に鋭い視線を張り巡らしている
うちに、オガタンはパソコンの前に素早く移動し、閉じていたウィンドウを全て
開いていく。ついでに隣のノートパソコンにも電源を入れた。
「クソ、もうすぐあっちは11時か。オレの票がどのくらいあるのか判らん……。
王子、キミもパソコンを持っていただろう。パスワード入力は出来るな?」
オガタンの通常とは違う様子に好奇心を引き出されたのか、ハマグリゴイシか
ら飛び降りた少年王はオガタンの肩越しにパソコンの画面を覗き込む。
「パスワードはakiraだ」
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