裏階段 三谷編 5 - 7
(5)
火傷の痕は痛々しいとは思ったが、可哀想だとは感じなかった。
彼が自分の体に負ったものは彼の事情だ。こちらには関係がない。
傷がつけられる前に救ってやれなかったのなら同情は意味がないのだ。
耳たぶに唇を寄せると微かにコロンの香がした。安っぽい匂いだったが悪くはなかった。
塞がりかかったピアスの穴の痕があった。軽く噛んで舐めてやった。
「最近の高校生は随分オシャレなんだな。」
温度の低い肉片から首筋へとキスを移動させる。
「…無理矢理開けられたんだ。ヤだって言ったのにさ。」
確かに彼の華奢なパーツ一つ一つは顕微鏡で見た繊細な雪の結晶のように思わず無骨な指で
粉々にしてみたくなる衝動にかられる。
「相手は穴を開けただけでピアスは買ってくれなかったのかい?」
「変態野郎だったからな。他のとこにも穴を開けたがったから逃げた。」
「…賢明な判断だったな」
余分な会話をさせたおわびに彼の顎に手をそえて丁重に彼の唇にキスをする。
はじめのうちはソフトに触れあわせる程度にした。その間、節目がちではあったが彼は
目を閉じようとはしなかった。ただやはりこちらと視線は合わせようとはしなかった。
直前まで噛んでいたガムの味がした。徐々に重なる部分を増やして舌を送り込む。
「ん…」
向こうの舌を捉えて激しく吸いたててやるとようやく目蓋を強く閉じてそれらしい表情と
吐息になった。彼の口の中から吸い取っただ液を返すように押し込んでやると
意に介さず彼はそれを飲み下した。
そうなりながら彼の手が動いてこちらのシャツのボタンを外しにかかる。
その両手首を掴んでベッドに押さえ付ける。
先刻までよりは幾らか彼の体温が上がり呼吸が荒くなっていた。
火傷の痕が残っている方の小さな突起を脇からすくうように舐めてやった。
ピクリと一瞬彼の体が浮き上がって小動物のような小さな鳴き声が聞こえたような気がした。
(6)
周辺部分を口に含んで中央の固くなった小さな突起を舌で叩く。少し強く唇を押し付けると
彼の薄い皮下脂肪の下の胸骨を感じる。心臓の鼓動が若干速くリズムを刻んでいる。
最初にあげた小さな声の後は彼は黙って愛撫を受けていた。
一通りの手順を踏んで彼の体内に精を放ち、それで終了する。それだけのものだ。
タイトルホルダーとなって後援会の会長に引き合わされる人物の人数や種類が増えた。
その内の一人が彼を、この少年をオレに紹介した。どういう意図があったのかは分からない。
「そこそこに打てる子だが碁を教えてやって欲しい。」含みのある顔でそう言われたが
その時は断った。彼自身がそれを望んでいそうになかった。
その後、意外な場所で彼と再会した。正確には彼を見かけた、だったが。
唇を離してもう一方の突起へ移動させる。今まで刺激を受けていた方は
艶やかな赤みにくっきりと形を顕わし、白く平らな胸と僅かな色の違いだけで
一体化しているもう一方とは異なるパーツのような様相になっていた。
沈黙しているもう片方にも行為を加える。
今度は強めに吸い小さな先端に歯を立ててやった。口の中で瞬時にそれは形を変化させた。
顔を見ると、彼は相変わらず視線をどこか別の空間に据えている。だが下腹部では
確実に変化を起こしている。この年頃の男子は獣同然だ。自分が望むと望まざると
関わらず性的な刺激を肉体的に受ければ嫌でも体は反応する。
進藤も、アキラもそうだった。この少年も同じだ。そして、かつての自分がそうであった。
「痛…っ!!」
一瞬噛む力が強くなり過ぎた。彼が声をあげた。
(7)
一度歯を離し、癒すようにもう一度口に含んで舌で慰撫する。
てっきり機嫌を損ね毛を逆立てて唸るかと思った相手は、意外に静かだった。
明らかにさっきよりも皮膚に赤みが差しこちらの刺激に対して反応を強める。
もういちど犬歯の一番尖った先で小さな突起を捉えた。
ビクリと彼が小さく体を震わせ、息を止めた。
少しずつ力を加え、それこそ小さめのピアス程しかないその部分を潰すように噛む。
「痛…イタ…ア…っ、ハアッ…」
きつく噛みしごく程に彼の吐息に甘いものが混じり始める。
彼の両足を割り開いて覆い被さっているこちらの体の下で勃ち上がって来る感触がある。
最初見た時はそれ程ではないと思っていた彼のペニスが固く雄々しくそそり立ち、
先端を濡らしている。
「…痛いくらいが好き、か。そういうことかな。」
返答は来なかった。
ジッパーをおろしてこちらのモノを取り出し、彼の後ろの中心にあてがった。
彼の目が驚いたように見開かれこちらを向いた。逃げようとする体の脇の両腕を
再び力を入れてベッドに押し付け、乳首に吸い付き、噛む。
そうしながら下の方のこちらの先端で彼のトビラを圧迫する。
「…見かけと違って、随分強引なんだな、あんた…」
「相手に合わせているだけのつもりだが。」
痛みを伴う刺激を乳首に与えながら数度トビラを圧迫すると、ズクリと先端が
彼の体内に潜り込んだ。
冷めた言葉を発しながらも彼のアヌスはとても温かだった。
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