初めての体験 Asid 5 - 8


(5)
 「な…何すんだよ!」
和谷は、ボクの体の下で藻掻いた。だが、腕の自由を奪われ、上手く逃げられないようだ。
怯えた顔にボクは、ひどく昂ぶっていく自分を感じた。
 これだ!これなんだよ!!この表情がイイんだ!しかし、ボクは、興奮しながらも
どこか冷めていた。きっと、相手が進藤ではないからだ。ああ…!これが進藤だったら…!
 ボクは、和谷を仰向けに転がした。彼のTシャツを捲り上げ、胸や腹に手を這わせる。
「や…やめろよ…オイ…ヤメロったら!」
口調はきついが、半泣きだ。楽しくて仕方がない。
 ズボンに手を掛けると、和谷は悲鳴を上げた。これから、ボクが何をするつもりなのか
わかっているらしい。そうだよ。ふふ…。和谷は、そうさせまいと滅茶苦茶に暴れた。
だが、ボクは、暴れる和谷の股間を、思い切り握りしめた。
「―――――――!」
和谷は暴れるのをやめた。相当痛かったらしい。目に涙が溜まっている。
 下着ごと、ズボンを脱がし、再び俯せにした。和谷は声もなく震えている。可哀想だけど、
やるよ。ボクは、彼の尻を掴むとそのまま何の施しもなく彼を貫いた。
「ギャアアァ!」
悲鳴が耳に心地いい。ボクが動く度、和谷が悲鳴を上げる。
「ひぃ…!も…やだ…ゆるしてくれよ…!!ああ…!」
和谷が息も絶え絶えに、泣きながらボクに許しを請う。コンクリートの地面に頬を押しつけ、
必死に痛みを耐えていた。さすがにちょっと可哀想になった。
ボクは、彼の前に手を回し、そっと彼のモノを握った。本当は、進藤以外の人間にこんな
ことしたくないけど―――ボクは自分の動きに合わせて、和谷のモノをゆっくりと扱いた。


(6)
 暫くすると、和谷の声に、苦痛以外のものが混ざり始めた。瞼を堅く閉じ、首筋も
薄桃色に染まっている。開きっぱなしの口から吐かれる息は甘い。
「ふふ…気持ちいいのかい?さっきまであんなに泣いていたのに?」
その一言で、和谷の身体が、一気に熱を持った。ボクに声を聞かせまいと、歯を食いしばって
いる。ふん…面白い。ボクは、和谷への突き上げを強めに変えた。根気強く、和谷の中を
かき回す。もちろん、その間も手は休めない。
「はぁ…!」
和谷の息が一瞬止まった。ここがいいのか…。なるほど…。ボクは、そこを中心に、
激しく中を擦り上げ続けた。
「あぁっ」
和谷が喘いだ。そこから後は、声が途切れることはなかった。

「ああ…!いやだぁ―――――!」
和谷は一声そう叫ぶと、身体を硬直させた。ボクの手の中に和谷は、すべてを放っていた。
 ボクは、自分も欲望の印を和谷の中へ注ぎ込むと、すぐに彼から離れた。和谷は、
ぼんやりと濡れた瞳でボクを見ている。ボクは、自分の衣服を整えると用は済んだとばかりに、
彼に背中を向けた。
 その途端、彼が悲痛な声で泣き叫んだ。
「待てよ…!オレをこのままにしていくのか…?やめてくれよ…せめて…この手錠外して
 くれよぉ…頼むから…!」
和谷は、ボクの背中に向かって懇願した。すすり泣きが耳に心地いい。ゾクゾクするよ。


(7)
 ボクは、振り返って和谷の側に膝をついた。泣いている彼に向かって、微笑みかける。
「冗談だよ。いくら何でもこのまま放っておくわけないじゃないか…。」
彼にそう言った物の冗談半分、本気半分だ。彼が懇願しなければ、ボクはあのままここから
立ち去っていた。身体の自由が利かない、裸の彼をそのまま置き去りにして―――――ね。
 和谷は、非難と恐怖と、そして快感の入り交じった潤んだ瞳でボクを睨んだ。その紅く
染まった目元が色っぽくて堪らない。何とも思っていない和谷に対してさえ、こんな感情を
抱くのなら、進藤が相手ならボクはどうなってしまうのだろう。
 血と精液に汚れた和谷の下半身を、ハンカチで丁寧に拭ってやった。下着とズボンを
きちんと履かせ、まくり上がったTシャツも整えた。和谷は逆らわず、その間ボクに
身を任せていた。
 苦痛に呻く和谷を座らせ、後ろにまわった。手錠を外すためだ。彼の手は、傷だらけに
なっていた。暴れたせいだろう。そうか…直接、かけるとこういう可能性もあるわけだ。
ボクの知識はまた一つ増えた。
 とりあえず、和谷のお陰で、ボクの気分はすっきりした。和谷は、まだ泣いていたけど…。
「楽しかったよ。機会があれば、また遊ばないか?」
これは、冗談だ。ボクは、和谷の気持ちを和らげようとにっこり笑った。
 和谷は真っ青な顔で、怯えて、尻で後ずさった。笑ったつもりなのに…失敗したか?
まあ、いい。どのみち、彼とこれ以上関わる気はない。別の玩具も試してみたかったけどね。
相手は、誰でもいいんだし。他にもチャンスはあるだろう。


(8)
 「じゃあ、さよなら。和谷君。」
ボクは、今度こそ本当に彼に背中を向けた。背中に視線を感じたが、振り返る必要は
ないだろう。

 汚れたハンカチを丸めて、ゴミ箱に捨てた。その時、後ろから声をかけられた。
この声は…!
「進藤!」
胸が弾む。喜びを隠しきれない。ああ〜ドキドキする。え…あれ?何か怒ってる?
「もう!一緒に帰ろうって言っただろ!なんで待っててくれないんだよ?」
 進藤、拗ねた顔も可愛いね。そのまま、棋院のトイレに連れ込んで、いけないことを
したくなるよ。この手錠を使ってね…。でも……良かった…。使わずにすみそうだ。
あー、すっきりさせといて正解だった。
 ありがとう、和谷。キミのお陰で、ボクがこの手の道具を使うためには、いろいろと
勉強する必要があることがわかったよ。進藤も傷つけずにすんだ。
 その道の達人は、苦痛も快感も指先の力加減一つで思いのままに操るという。幸い、
ボクは、勉強は嫌いじゃない。目的のためには、努力も惜しまない。色々と実践すれば、
上達も早いだろう。

 進藤に笑いかけた。進藤は、ポッと頬を染めて、ボクを見つめ返した。
「ごめん。時間が余ったから、ちょっと屋上で休んでいたんだ。」
「なあんだ。いつもの場所にいないから…オレ、てっきり、おいて行かれたかと…」
照れ笑いをする進藤も実にラブリーだ。要するに、進藤は何をしても可愛いということだ。
「なあ、塔矢…今日、オマエの家に泊まってもいい?」
進藤が、はにかみながらボクを見上げる。なんて、可愛いんだ!!!
 今夜は、きっとイイ気分で眠れるはずだ。ボクの頭の中で、今日の和谷の姿は、既に進藤に
置き換えられている。……そして、いつかは本物の進藤と………。
 待っていてくれ、進藤。きっと、すべての技を修得して、キミを快感で咽び泣かせてみせる!
新たな目標を前に、ボクは体中の血が滾るのを感じた。
――――――とりあえずは、どこかで鞭を手に入れるか……。隠し場所も確保しないとな。
 そんなことを考えていると進藤が、大きな目でボクの顔を覗き込んできた。ボクの返事を
待っている。
「もちろんだよ。」
ボクは、優しく笑って言った。


おわり



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