| Shangri-La 50
 
 (50)
 最悪だ…………
 
 入眠時の記憶がなくなる事は、頻繁ではないが
 両親が家を空けるようになってから、時々経験していた。
 ただ、これまでは、自宅で一人の時ばかりだったから
 記憶が無い時間に何をしたのか、考えたことはなかった。
 ヒカルとセックスしたことはたいした問題ではない。
 もしヒカルが本当に眠れないというのなら
 最終手段として考えていたからだ。
 
 食事と睡眠は、生命維持の面から言えば最も重要な要素で
 それが出来ない、摂りたいと思わないと言い切るヒカルは
 絶対危険な状態に違いないし、
 嫌だと言うなら、無理にでも摂取させるしかない。
 食事はなんとかとれたし、睡眠だって大丈夫かも、と思っていた。
 が、夜半にヒカルが起きてしまっていたのを見て
 強制的に眠りにつかせる方法はないか、一瞬のうちに考え
 結論として、ヒカルを襲う気になったのは事実だ。
 いかに深い眠りを誘うか、分かっていたから――。
 お風呂では勃ったし、できるはずだと思った。
 
 それより問題は、その襲い方だ。
 ヒカルの中の自分は、昨晩の記憶にあるような事を
 するようなキャラクターではない。
 どこか夢を見ているようで、なのに確かにヒカルをとらえていた記憶。
 夢と現実との境目がすごく曖昧で、ふわふわと足下がおぼつかない状態で
 促されるままに、いやそれ以上に、淫らに振る舞った記憶―――
 そこから推察すると、凄いことをして誘ったのかもしれない。
 
 
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