初めての体験 50 - 55
(50)
ヒカルは森下に勢い良く抱きついて、そのまま畳の上に倒れ込んだ。森下の口の中に
自分の舌を差し込んだ。男臭い匂いがヒカルの口の中に広がった。
森下は藻掻いた。ヒカルをはね除けようと思えば、簡単に出来るはずなのに何故か
巧くいかなかった。華奢なヒカルにのし掛かられて、いいようにされている自分が不甲斐なかった。
ヒカルの手が森下の股間のあたりを彷徨った。森下の耳に、ファスナーを下ろす音が聞こえてきた。
「先生…じっとして…」
藻掻く森下の耳元でヒカルがそっと囁いた。その蠱惑的な声音に森下自身が反応した。
ヒカルはにんまり笑うと、中身をズボンから取り出し、弄び始めた。
ヒカルが手を動かす度に、湿ったような音が周囲に響いた。森下はヒカルが与える快感に耐えようとした。
「先生…気持ちいい…?」
いつの間にか森下の胸元ははだけられ、ヒカルがそこに舌を這わせていた。指で森下自身を
愛撫しながら、乳首を責めた。森下はヒカルの手練手管に翻弄された。
頭の中が白くなっていく。
「うぅ…」
「森下先生は…塔矢先生とは違うね…塔矢先生は…」
呻く森下の耳に、ヒカルの声が届いた。森下は“塔矢”という言葉を聞いたとたん、
ヒカルを自分の上から乱暴に押しのけると、そのまま畳の上に縫いつけた。
ヒカルはびっくりして、目を瞠った。何が起こったのだろうか…?
(51)
先ほどとは打って変わった森下の形相に、ヒカルは声を失った。怒鳴られるかと身を
すくませたが、森下はヒカルを睨み付けただけだった。そのまま無言で、ヒカルのシャツを
たくし上げた。淡く紅色に色づいた突起が、森下の目に入った。森下は、いきなり、
そこに噛みついた。
「い…痛…!」
ヒカルが、小さく悲鳴を上げた。森下は、乱暴な仕草で乳首を愛撫した。強く噛んだり、
きつく吸い上げたりした。
「あ…あぁ…せんせ…いた…い…はぁ…ん…」
ヒカルは、その痛みだけではない感覚に乱れ始めた。ハァハァと息を弾ませるヒカルを
森下は一瞥すると、ヒカルの制服のズボンに手をかけた。そうして、下着ごと一気に足から引き抜く。
ヒカルは全裸で畳の上に転がされている。その細い体に森下は手を這わせた。大きな
掌が、徐々に下の方に下がっていく。ヒカルは荒い息の下から、その手がある一点に到達
するのを感じた。
「や…いた…!」
森下は、ヒカルの物を無造作に握り、そのまま荒々しく上下に扱いた。ヒカルが逃れようと
僅かに体を捻った。しかし、森下は、ヒカルが起きあがれないよう胸のあたりを押さえ付けた。
「やぁ…ハァ…んん…」
やがて、ヒカルが鼻から抜けるような声で喘ぎ始めた。ヒカルの唇から赤い舌が、ちろちろと
見え隠れする。魚のようにパクパクさせているヒカルの口に、森下は自分の指を突っ込んだ。
「ん…む…!!」
ヒカルの顎を固定し、深く指を入れた。喉の奥近くまで、いきなり三本も指を入れられて、
ヒカルは餌付いた。
「ぐ…んん…げほ…うぇ…げぇ…」
ヒカルが苦しそうに、手足をジタバタとさせた。目に涙が溢れていた。
(52)
暫くして、森下は、ヒカルを一旦解放した。ヒカルは、起きあがり、苦しそうに体を折り曲げた。
涙を流して、咳き込んでいる。畳の上に涙と涎のシミが出来た。
げえげえ言っているヒカルを、森下は再び捕らえ俯せにした。
「せんせい…」
ヒカルが振り返って、涙に濡れた瞳で森下を不安そうに見つめた。森下は相変わらず、
無言である。その静かさがかえってヒカルを怯えさせた。いつもの森下とは別人のようだった。
ヒカルの不安を知ってか知らずか、森下は手荒くヒカルを扱った。ヒカルの腰を乱暴に
引き寄せ、後ろに指を突き立てた。
ズブリッ――――― !
という音がしたような気がした。「――ッ!」ヒカルは瞬間息を詰めた。背中を伝って、
痛みが駆け上がってきた。ヒカルは歯を食いしばって苦痛に耐えた。
森下の無骨な指が、ヒカルの内部をかき回している。一本ずつ指を増やされる度、
ヒカルは喘いだ。ズニュズニュと卑わいな音を立てて、指が後ろで抽出と挿入を繰り返した。
「あん…あ…いい…うん…」
いつしかヒカルは甘い吐息を漏らし始めた。ヒカルの嬌態は、森下をますます高ぶらせた。
森下の指の動きが、段々と激しくなっていった。
「アッ」
森下が突然、指を引き抜いた。そして、ヒカルの腰をがっちりと固定すると、
自分の物でヒカルを一息に貫いた。
(53)
「ア――――――――ッ!」
ヒカルが甲高い声を上げた。指で慣らされていたとはいえ、その乱暴なやり方にヒカルは
息が止まりそうになった。森下は激しくヒカルを突き上げ続ける。
「あ…や…せん…せ…やだぁ…」
「せんせ…やめ…て…いや…いやぁ…」
泣きながら「やめて」と懇願するヒカルの股間は、言葉とは裏腹に堅く張りつめていた。
森下の熱く堅い物が、ヒカルの弱いところを刺激していた。
「――――――――ッ!」
ヒカルは畳の上に欲望を解き放った。森下は、ぐったりとしたヒカルを激しく揺さぶって
いたが、暫くしてからヒカルの中に熱いものを吐き出した。
「塔矢…オレ、森下先生に怒られちゃった…」
ヒカルがしょんぼりと肩を落として言った。
「えっ?どうして?」
アキラは、驚いて訊ねた。
「森下先生…塔矢先生をライバル視しているからさぁ…塔矢と仲良くするなって…」
「そんな…じゃあ…もう会えないのか…?そんな理不尽なこと、進藤は受け入れるのか…!?」
アキラがヒカルの肩を乱暴に掴んで揺さぶった。目はきつく吊り上がっている。
ヒカルは、アキラの手に自分の手を重ねてにっこり笑った。
「…んなわけねーじゃん。オレ、先生にちゃんと『塔矢と仲良くしたい』って言っといた 。」
「そしたら、先生もわかってくれたし…」
ヒカルが「驚いた?」と、ペロッと舌を出して見せた。アキラはホッと胸をなで下ろして、
「もう…!びっくりさせるなよ…!」
と、ヒカルの額をコツンと小突いた。ヒカルは悪戯っぽく笑って、アキラに抱きついた。
実は、ヒカルがアキラに言ったことは、半分は本当のことだが、もう半分は事実とは少し違う。
ヒカルは、自分と関係したことを逆手に取って、森下に脅しをかけたのだ。そうして、アキラとの
逢瀬を勝ち取った。しかし、それをアキラにわざわざ告げる必要はない。
森下は最後の詰めが甘い…とヒカルは思った。行洋なら、きっとこうはいかない。
ヒカルは、アキラの腕の中で密かに笑った。
森下先生……さすが、オレの師匠。でも、塔矢先生にはちと劣るかな?
『忘れない内にメモしなくちゃ』とヒカルは頭の片隅で考えた。
<終>
(54)
緒方は、自分の隣で安らかな寝息を立てている少年を見て、溜息をついた。
『どうして、こんなことになってしまったのだろう…。』
実をいうと、昨夜のことは、何も覚えていない。記憶がなくなるほど飲んだのに、
できたのだろうかと言う疑問もあった。だが、現実に裸の自分の隣に、
裸の少年が眠っている。
『まさか…本当にオレは…こんな子供とやってしまったのか?』
逡巡しているうちに、少年が目を覚ましてしまった。
「緒方先生、おはよう。」
少年が大きく伸びをしながら、緒方に挨拶をした。
「お…おはよう…進藤…」
緒方は、ヒカルの顔をまともに見られなかった。話そうとしたが、顔が引きつる。
酒の上の過ちとはいえ、取り返しがつかない。
(55)
「し…進藤…昨日は…」
「先生──昨日は大変だったよ。」
緒方の質問に、ヒカルの声がかぶさる。
「先生、酔っぱらっちゃってさぁ。オレに頭からビールかけたんだよ。
覚えてないの?」
ヒカルの話はこうだ。昨夜、ヒカルは緒方のマンションを訪ねた。特に目的が
あったわけではない。ただ、暇だった。それだけだ。一局ぐらいは打ってもらえるかも
と思った。ヒカルを玄関に招き入れた時、緒方はもうすでにしたたかに
酔っていた。その時点で引き返そうとしたヒカルを無理矢理、部屋へ
連れ込んだ。緒方は、酌を要求し、ヒカルが返杯を断ると、頭からビールを
振り掛けて、大笑いした。あげく、泣いて抗議するヒカルをほったらかしにして、
そのまま眠ったのだという。
「先生の服を脱がして、ベッドに入れるの大変だった。先生もビールでびしょ濡れ
だったしさ。オレも勝手にシャワー借りちゃったよ。」
ヒカルの言葉は緒方にとって信じられないことだった。確かに昨日は酔っていた。
ヒカルが来たことも朧気ながら覚えている。あくまでも朧気だが…。
しかし、いくら何でも…それは嘘だろう。自分は分別のある大人だ。子供に絡み酒など
するわけがない。…とはいうものの、自分には前科があった。『saiと打たせろ』と
酔って絡みまくったことが…。床も掃除した後があったし、洗濯機の中にも、ビールに
濡れた服が放りこまれている。顔から血の気が引いていく。
ヒカルの言うことは事実かもしれない…。落ち込みそうだった。
頭が痛いのは、二日酔いのせいだけではないだろう。
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