裏階段 アキラ編 51 - 52


(51)
最初の頃は毎夜のように夢枕に伯父が立ち、オレを見下ろしていた。
「あんたに付きまとわれる覚えはない…」
何度もそう叫んだが、伯父の濁った色の眼球の冷たい視線は変化がない。
自分の才能を吸い上げ奪い取って行った若々しい生命を恨むかのように。
「オレが望んだわけじゃない…!」


(52)
その伯父の手がひょろりと伸びて来てオレの体にまとわリ付き、何度もうなされて目を覚ました。
伯父の体が覆い被さって息が出来なくなる事もあった。
伯父以外の、オレを抱いた名前も知らない男達も現われる事があった。
先生の寝室は居間を挟んだ反対側にあって、気付かれる事はないと思っていたが、
ある夜、同じようにうなされ、目を覚ました時額に手が当てられていた。
「大丈夫かい、…ひどい汗だ。」
オレは迷わず目の前のその声の持ち主に向かって両手を伸ばし抱き着いていた。

ふいに家の外に車が停まる音がして、人が降りる気配にハッとした。
アキラはなお強くしがみついて離れようとしなかった。
「約束するよ、ずっとアキラくんの傍にいる…。」
「本当に…?」
頷いてアキラの体を布団の中に横たえ、部屋を出た。



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