失着点・龍界編 51 - 55
(51)
アキラは沢淵の指と舌による執拗な愛撫を受け続けていた。唇から耳、首筋、
左右の乳首へと何度となく肉厚な舌が往復し、指先は柔らかな袋を揉みしだき
包皮を剥き下げて敏感であるはずの部分を弄ぶ。だがそこは刺激を受けた
時だけ僅かに反応するものの、指が離れるとまた元の大きさに戻ってしまう。
一向にそれらしい何の反応も顕わさないアキラに沢淵は再び苛立ちを
隠せなくなっていた。
「…そろそろこちらも、試させてもらうか。」
沢淵はアキラの両足を割り開くように持ち上げると、その付け根に手を
持って行った。柔らかな部分の付け根に沿うように指先を運ぶとその奥の
目的の場所に近付けていく。指先の腹で数回その周辺を撫で回すと
固く門を閉ざした中心に指を突き立てて力を加えた。
「…っ!!」
背の高さに相対する太く長い中指が一気に半分程アキラの体内に侵入した。
さすがに苦痛を感じたのか、アキラはわずかに顔をしかめ、体を浮かせた。
「…これは、かなりきついようだな。」
沢淵は一度アキラから指を引き抜く。その衝撃にビクッとアキラが体を
一瞬震わせた。沢淵はベッドの脇の机から瓶を出し、中のクリーム状の物を
手にとると指に馴染ませ、もう一度今度は指の付け根まで突き入れた。
「…中はずいぶん温かいよ…。“お人形さん”。」
天井に感情のない視線を向けたまま、アキラは体内に侵入し何かを探るように
動く異物の感触に耐える。手慣れた様子で指の腹は目的の箇所を探り当てた。
クリームによって滑らかな動きを許された指はその部分を中心にゆっくりと
抽出の動きを始めた。
(52)
「…っ!」
指は不規則なリズムで時々向きを換え、時には半回転しながら抽出を
くり返す。唇を噛んだアキラの口から微かに強い呼気が漏れる。
同時に、沢淵がアキラのペニスを口に含んで吸いたてる。
「っう…っ!」
ビクッと最初の一瞬だけアキラは四肢を突っ張らせた。だが、歯を噛み締め、
体の両脇の両手でシーツを握りしめなんとか無反応の状態を維持する。
それでも局部では明らかに今までと違って確実に変化が起きていた。
「…ほお、子供だと思っていたが、なかなかのモノじゃないか…」
色付きこそ淡いまでも、大きく張り詰めて来たその部分は充分成年の
大きさを持っていた。
指で集中的に前立腺を刺激されて沢淵の口の中でアキラ自身は限界近くに
固く張り上がり、青臭い蜜を溢れさせていた。狭道の奥はわずかな指の動きにも
反応し締め付けようと蠢く。
「こいつはそこらの女よりも具合が良さそうだな…。」
沢淵は、アキラは決して感度が鈍いわけではなく、むしろ非常に鋭い触感の
持ち主だと思った。だが今はその部分と上半身は完全に精神力によって
切り離され、アキラの表情は陶器のような透明な白さと孤高さを
保ち続けている。呼吸すら乱すまいとする意思の強さに沢淵は敬服すら
する気になった。
「なかなか良い声を聞かせてもらえないようだな…」
指が2本になり、尚も深い部分と敏感な部分への執拗な刺激が続けられた。
「っ…!」
沈黙した状態のまま、アキラは急速に駆け上がらされていった。
(53)
アキラの胸部が反り上がり、沢淵の口の中で弾ける。
両膝が沢淵の体を締めるように閉じる。
それでも沢淵は刺激を与えるのを止めず、むしろ激しくする。
「…っ!…っ!」
声こそ必死でかみ殺していたが、アキラの全身から汗が吹き出し、
電気ショックを受けているように痙攣を続ける。
それでも断崖の崖っ淵に片足で立つようにアキラは留まり続ける。
決してお前の手には落ちないと、無言で耐え難い刺激に耐えるアキラに、
離れた場所で様子を伺う見張りの男も圧倒され息を飲む。
「すげえ…あんな気の強えガキ、初めてだな…」
大抵の少年はとっくに泣叫び沢淵から逃れようともがき暴れ狂うところだ。
狭道の奥が再度脈打ち、沢淵の口の中に2度目が放たれた。
指はその位置のままに沢淵は口を離し、アキラの様子を見る。
汗で額や頬に髪を張り付け、立て続けの射精にぐったりとしながらも
あくまで平静を装おう最初のままの顔がそこにあった。
「やれやれ、プライドの高い“お人形”さんだ。だが感度は申し分
ないようだ。…さて、朝までに何回イケるかな…。」
脅すような沢淵の言葉にもアキラは眉一つ動かさなかった。
その時ドアが小さくノックされ、見張りが覗き窓で確認してドアを開けた。
部屋の中に後ろ手に縛られたヒカルが抱えられるようにして連れて来られる。
「おいおい、せっかくの美人さんが台無しじゃないか。」
ヒカルの顔を見た沢淵が思わず呆れたように声を荒げる。
顔を上げたヒカルは自分の目に入った光景に思わず言葉を失った。
(54)
「…!!」
アキラもまた、顔面を腫らし鼻から口、切れた唇から顎にかけて
血に染めた痛々しいヒカルを見て驚愕していた。
「…進藤…!!」
アキラは体を起こそうとして沢淵に組みしかれた。
「塔矢…!!」
ヒカルもベッドの近くに駆け寄ろうとして2人の男に
押さえ付けられ、沢淵の指示でベッドの横の椅子に縛り付けられた。
腫れている唇でヒカルは歯を食いしばり、沢淵を激しく睨み付ける。
「それ以上塔矢に何かしてみろ…!殺してやる…!!」
その口にタオルを噛ませられて頭の後ろで縛られる。
「うるさい仔犬だな。大人しく見ていろって。」
ヒカルを連れて来た男達はニヤニヤしながらヒカルとベッドの上の
アキラを見比べるように眺める。
「それにしてもこいつらランクが高いぜ…。」
彼等は沢淵が早く楽しみを終わらせて自分達に順番が来る時を待っていた。
すると沢淵が、一人の男に目で指示した。その男は嬉しそうにアキラの枕元の
方にまわり沢淵に替わってアキラの両手首をアキラの頭の方で押さえ付ける。
沢淵は指の動きを再開し、もう片方の手で張り上がったアキラのペニスを擦り
あげる。同時に男はアキラの胸部に唇を這わせ乳首を吸い始めた。
「う…んっー!」
初めてアキラは声を漏らした。ヒカルの状態に動揺し緊張の糸が途切れかけ、
精神力で感触を遮断する事が限界に近付きつつあったところに2人の男から
同時に愛撫を受けたのだ。
(55)
(やめろーーーー!!)
ヒカルが縛られた手首をヒモに食い込ませ肩を震わせ、動ける範囲で体を
動かしてもがく。
「大人しく見てろよ、美人さん」
沢淵の指示を受けられなかった方の男がシャツの首から手を中に入れて
ヒカルの胸部をまさぐり始めた。もう片方の手をズボンのファスナーへと
のばす。目前に繰り広げられる光景に我慢できなくなったのだ。
「進藤には手を出すな!!」
男達の間からアキラが叫んだ。怒鳴られた男が思わず手を引っ込める程の
剣幕だった。
「まあまあ、心配しなくてもあちらの美人さんには何もしないよ。
…ただ、あまりに“お人形”さんが愛想がないとどうなるか分からないが。」
沢淵はそう言ってニヤニヤしながらアキラを見る。
天井を眺めているだけだったアキラの目が沢淵を睨み据えた。
アキラはもう一度ヒカルの方を見た。タオルで覆われた上に、ヒカルの両目
から怒りで溢れ出た涙が伝い滲みていた。その目を、穏やかさを取り戻した
アキラの目が見つめる。そのアキラの視線にヒカルはハッとなった。
激しい愛撫が続けられる中でもアキラの目は深い湖のように落ち着いていた。
―ボクは、大丈夫だから。
声が出たわけではなかったが、アキラの唇はそう動いていた。
そしてアキラは静かに目を閉じる。閉じた次の瞬間から切なく吐息が漏れた。
「やっと素直に反応する気になったな…」
それまでほとんど声を漏らさなかったアキラの唇が喘ぐように開き、刺激に
反応して肩や膝がよじられるように動き出した。
|