無題 第2部 52
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頬がまだ赤いのが自分でもわかる。触れられた耳が熱い。
しかも、赤面しながらも、自然と顔が笑ってしまうのが防げない。
手で口元を隠しても隠し切れはしないだろう。
アキラの耳の奥でヒカルの声がなんどもなんども繰り返し蘇る。
―キレイだな…カワイイぜ…
「…バカヤロウ…!」
電車の中で、アキラは小さく悪態をついた。
「進藤のヤツ…人をからかって…」
触れられた耳が熱い。
彼は、普通にちょっと触わっただけだったのに、そこから体中に電流が走ったみたいだった。
そして今でもじんじんと痺れるように感じている。
思い出しただけでも鼓動が早くなり、心臓の音が響いて、車内中の人に聞こえているんじゃ
ないかと思うほどだ。
―これは一体、何?
アキラには自分の身体の反応が理解できずにいた。
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