Linkage 53 - 54
(53)
10分ほど経過し、アキラの様子を静かに覗き込んだ緒方は、様子がどこかおかしいことに気付き、
ライトをつけるとアキラの頬を軽く叩いた。
「アキラ君、大丈夫か?どこか具合が悪いのか?」
アキラは薄目を開けて声の方向に視線を向けるが、その焦点が合っていないのは、緒方から見ても
明らかである。
「……んッ……緒方さぁ…ん……」
甘えるような吐息混じりの声で、緒方の名を呼ぶアキラは、かけてある羽布団を勢いよく剥がした。
「……緒方さん……、ボク……なんだか熱い……」
緒方は慌ててアキラの赤みを帯びた頬と首筋に手を当てる。
確かに通常よりも熱を持ち、首筋は僅かだが汗ばんでいた。
アキラは肘をついて上体を起こそうとするが、うまく力が入らないのか、ガクッと崩れ落ちそうになる。
緒方はそんなアキラを支えて起こしてやると、アキラのすぐ横に腰掛けた。
なんとか起きたものの、すぐに倒れそうになるアキラの上体を胸に抱き寄せる。
「どこか痛いところや、苦しいところは?」
汗で湿ったシャツ越しにアキラの背中をさすりながら、緒方はアキラの耳元で尋ねた。
アキラはなんとか首を横に振って意思表示をするが、身体に力が入らないのか、緒方の胸にしなだれ
かかったままである。
胸にかかるアキラの吐息が熱い。
「……なんか……ヘンな気分で…………はぁッ……身体が…熱くて……」
「身体が熱くて、気分が悪いんだな。吐き気は?」
アキラは再び力無く首を振った。
緒方は、自身も薬の服用で身体が熱く感じる経験はあったが、そのまま眠りについてしまうため、
特に気分が悪くなったことはない。
(量が半端だったのか……?)
(54)
ぐったりと緒方の胸に倒れ込むアキラを抱き上げると、緒方はベッドに腰掛ける自身の股の上に
アキラを座らせ、上体を肩で支えてやった。
抱き上げた際にアキラの腕がぶつかり、僅かにずれた眼鏡を外し、サイドテーブルに置くと、
ゆっくりとアキラの腰から背中にかけて労るようにさすってやる。
その感触に、アキラが一瞬ぴくりと身を震わせる。
「……んンッ……ア…………」
緒方の首筋に触れるか触れないかのところで、アキラの唇から喘ぎ声にも似た吐息が漏れた。
その感触に、緒方の背筋には電流のようなものが駆け抜ける。
「……アキラ君……!?」
緒方はアキラの髪の中に手を差し入れると、自身の方に顔を向かせた。
上気した顔のアキラは、やはり目の焦点が合っていないのか、トロンとした虚ろな表情を浮かべていた。
半開きになった唇からは、絶えず熱い吐息が漏れ、濡れた赤い舌先が僅かに覗く。
緒方はアキラのしどけない姿に魅入られたかのように、声を失ったまましばらく動けずにいた。
「……おが…た……さん……」
アキラはそんな緒方にかろうじて聞こえる程度の、ごく小さな声を吐息混じりに漏らすと、
緒方の背に腕を回し、きゅっとバスローブを掴む。
その瞬間、緒方はアキラの頭を引き寄せると、その唇に迷うことなく自身の唇を重ねた。
状況を把握できていないのか、アキラは緒方の突然の行為にも抵抗しない。
ただ、バスローブを掴む手に、ほんの僅かに力がこもる。
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