トーヤアキラの一日 54 - 55


(54)
全ての疑問が解けるまでアキラは真剣な表情でマウスをクリックし続け、検索し終わると
背もたれに体重を預けて深く溜息をついた。
果たしてヒカルがこの行為を受け入れてくれるだろうか?アキラは心身共に、ヒカルを
傷つける事は絶対にしたくないと思っていたが、ヒカルを手に入れたい想いは具体的な
知識を得た事でさらに強くなっていく。想像するだけで、さっきのお互いを慰め合う
行為で得た快感以上の火種が体に宿るのを感じて体が疼く。
アキラは再びマウスに手をかけて準備行動を起こし始めた。


PCに向かって夢中で棋譜整理をしていたアキラが、思い出したように時計を見ると、
すでに10時を回っていた。
───早く来ないかな・・・・・
そう思いながら今日の天気予報をチェックしているとチャイムが鳴った。
───!!来た!!
アキラは急いで印鑑と封筒を探すが、机の上に見当たらない。
───??あれ??何処だ?
アキラはアイスクリームをしまう時に台所に置き忘れて来た事を思い出して、慌てて
台所に向かう。その間もチャイムは鳴り続け、外から声がする。
「塔矢さ〜ん!山猫宅急便で〜す!」
台所に置いてあった印鑑と封筒を握り締めてアキラは玄関に向かって走るが、ピカピカに
磨かれた廊下で滑って転びそうになってしまう。
「塔矢さ〜ん!!」
「・・ハイ!!今行きます!」
と大声で返事をしながら、アキラはいつに無く慌てている自分が滑稽で思わず苦笑する。


(55)
玄関の戸を開けると配達員が伝票を見ながら事務的に話しかける。
「代金引換のお荷物です。えーっと、PC備品で、代金は9922円ですけど・・」
そう言いながらアキラの顔を見て確認を求める。
配達員は品物がPC備品だと思っており、本当の中身を知るわけが無いのに、アキラは
顔が紅潮するのが分かり、心拍数も上がって落ち着かない。
「あ、はい。これ・・・・代金です。9922円」
「はい、どーも。丁度ですね。認印もお願いします。はい、これが商品です」
と言ってアキラに商品を手渡した。アキラは受け取りながら印鑑を差し出す。
「はい、どーも。これが領収書になりますので」
配達員は印鑑と領収書を手渡すとすぐに門の外に消えて行った。

アキラは戸を閉めて鍵をかけると、荷物を大事そうに抱えて自室へと向かった。
開けられていた窓と障子を閉めて荷物を机の上に置く。
絶対に自分で受け取らなければいけない代金引換の荷物は初めてではないが、なぜか
今回は落ち着かない。外からでは中身が分からない事を箱の全体を眺め回して確かめて
から、ガムテープを丁寧に剥がした。
箱を開けると、空気を入れて膨らませた透明のクッションが沢山入っていた。
アキラはそれを掻き分けて手探りで中身を引っ張り出すと、ゼリータイプのローション
三本と透明のケースに入れられた品物が出て来た。
アキラは自分で頼んだにも拘らず、不思議そうな表情でその品物をじっと眺めた。
───何だかいやに輝いているな・・・・・一、二、三、四、五、六、七。・・・七個か。
アキラはパッケージを開けると、現物を手にした。
添え付けの電池を装填してスイッチを入れると、いきなり意外に大きな音がして驚いた。
スイッチを小から中に、中から大にすると大きな振動で手が震える。
これを使った時のヒカルの反応を想像すると、自然に顔が緩んで、夜が待ちきれなくなる。



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