失着点・龍界編 54 - 55
(54)
「…!!」
アキラもまた、顔面を腫らし鼻から口、切れた唇から顎にかけて
血に染めた痛々しいヒカルを見て驚愕していた。
「…進藤…!!」
アキラは体を起こそうとして沢淵に組みしかれた。
「塔矢…!!」
ヒカルもベッドの近くに駆け寄ろうとして2人の男に
押さえ付けられ、沢淵の指示でベッドの横の椅子に縛り付けられた。
腫れている唇でヒカルは歯を食いしばり、沢淵を激しく睨み付ける。
「それ以上塔矢に何かしてみろ…!殺してやる…!!」
その口にタオルを噛ませられて頭の後ろで縛られる。
「うるさい仔犬だな。大人しく見ていろって。」
ヒカルを連れて来た男達はニヤニヤしながらヒカルとベッドの上の
アキラを見比べるように眺める。
「それにしてもこいつらランクが高いぜ…。」
彼等は沢淵が早く楽しみを終わらせて自分達に順番が来る時を待っていた。
すると沢淵が、一人の男に目で指示した。その男は嬉しそうにアキラの枕元の
方にまわり沢淵に替わってアキラの両手首をアキラの頭の方で押さえ付ける。
沢淵は指の動きを再開し、もう片方の手で張り上がったアキラのペニスを擦り
あげる。同時に男はアキラの胸部に唇を這わせ乳首を吸い始めた。
「う…んっー!」
初めてアキラは声を漏らした。ヒカルの状態に動揺し緊張の糸が途切れかけ、
精神力で感触を遮断する事が限界に近付きつつあったところに2人の男から
同時に愛撫を受けたのだ。
(55)
(やめろーーーー!!)
ヒカルが縛られた手首をヒモに食い込ませ肩を震わせ、動ける範囲で体を
動かしてもがく。
「大人しく見てろよ、美人さん」
沢淵の指示を受けられなかった方の男がシャツの首から手を中に入れて
ヒカルの胸部をまさぐり始めた。もう片方の手をズボンのファスナーへと
のばす。目前に繰り広げられる光景に我慢できなくなったのだ。
「進藤には手を出すな!!」
男達の間からアキラが叫んだ。怒鳴られた男が思わず手を引っ込める程の
剣幕だった。
「まあまあ、心配しなくてもあちらの美人さんには何もしないよ。
…ただ、あまりに“お人形”さんが愛想がないとどうなるか分からないが。」
沢淵はそう言ってニヤニヤしながらアキラを見る。
天井を眺めているだけだったアキラの目が沢淵を睨み据えた。
アキラはもう一度ヒカルの方を見た。タオルで覆われた上に、ヒカルの両目
から怒りで溢れ出た涙が伝い滲みていた。その目を、穏やかさを取り戻した
アキラの目が見つめる。そのアキラの視線にヒカルはハッとなった。
激しい愛撫が続けられる中でもアキラの目は深い湖のように落ち着いていた。
―ボクは、大丈夫だから。
声が出たわけではなかったが、アキラの唇はそう動いていた。
そしてアキラは静かに目を閉じる。閉じた次の瞬間から切なく吐息が漏れた。
「やっと素直に反応する気になったな…」
それまでほとんど声を漏らさなかったアキラの唇が喘ぐように開き、刺激に
反応して肩や膝がよじられるように動き出した。
|