Shangri-La第2章 55
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と、急に手首をつかまれて、はっとしたアキラは思わず手を引きかけた。
「ん…、なんだよぉ……」
「あ…ごめん、起こしちゃった?」
ヒカルの手が緩んだのをいいことに、アキラはまたヒカルの髪を梳いた。
まだ目も殆ど開いておらず、まだかなり眠そうだ。
「まだ眠いよね?いいよ、寝てて。まだ早いから…」
静かに囁くアキラの頚を、ヒカルはぐいっと抱き寄せ、
アキラはバランスを崩して、引かれるままヒカルの上に崩れた。
「塔矢、冷てー…」
ヒカルを置いて風呂に入った後ろめたさから、アキラは必死で否定した。
「ごめん…だって、眠いだろ?だから―――」
「ち、がう…髪、つめてー…」
「え?あ、だって、それは、キミがボクに涎たらしまくってたから…」
「よだれぇ…?んなん、してねー…」
「いや、もう凄くいっぱい垂らしてたじゃないか!
ボク前髪べたべたで、本当にひどかったのに!」
力の篭ったアキラの言葉に、ヒカルは返事が面倒に思えた。
「んー………寝よ?」
浮かべた笑顔すら眠そうなヒカルに、逆らう理由もない。
「うん、いいよ、寝ようか」
緩められた腕からすり抜け、アキラはヒカルの隣に再び収まった。
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