失着点・龍界編 55
(55)
(やめろーーーー!!)
ヒカルが縛られた手首をヒモに食い込ませ肩を震わせ、動ける範囲で体を
動かしてもがく。
「大人しく見てろよ、美人さん」
沢淵の指示を受けられなかった方の男がシャツの首から手を中に入れて
ヒカルの胸部をまさぐり始めた。もう片方の手をズボンのファスナーへと
のばす。目前に繰り広げられる光景に我慢できなくなったのだ。
「進藤には手を出すな!!」
男達の間からアキラが叫んだ。怒鳴られた男が思わず手を引っ込める程の
剣幕だった。
「まあまあ、心配しなくてもあちらの美人さんには何もしないよ。
…ただ、あまりに“お人形”さんが愛想がないとどうなるか分からないが。」
沢淵はそう言ってニヤニヤしながらアキラを見る。
天井を眺めているだけだったアキラの目が沢淵を睨み据えた。
アキラはもう一度ヒカルの方を見た。タオルで覆われた上に、ヒカルの両目
から怒りで溢れ出た涙が伝い滲みていた。その目を、穏やかさを取り戻した
アキラの目が見つめる。そのアキラの視線にヒカルはハッとなった。
激しい愛撫が続けられる中でもアキラの目は深い湖のように落ち着いていた。
―ボクは、大丈夫だから。
声が出たわけではなかったが、アキラの唇はそう動いていた。
そしてアキラは静かに目を閉じる。閉じた次の瞬間から切なく吐息が漏れた。
「やっと素直に反応する気になったな…」
それまでほとんど声を漏らさなかったアキラの唇が喘ぐように開き、刺激に
反応して肩や膝がよじられるように動き出した。
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