初めての体験 Asid 55 - 56


(55)
 進藤のカレーは、ちょっぴり焦げていた。だが、ボクにとっては満願全席よりすごい
ごちそうだった。
「焦げちった…ゴメン…塔矢…」
進藤がしょんぼりとボクに言った。
「気にする程じゃない。十分おいしいよ。おかわりしてもいい?」
進藤はうれしそうに笑った。その笑顔だけで、三杯はいけるよ。 四ヶ月間耐えた甲斐が
あった……。幸せだ。



「オレ、ずーっとオマエに会いたかった。」
「ボクも…」
いつもなら、縛られたり泣かされたりしている進藤を思い浮かべるところだが、今日は
そんな気にならない。目隠しされた進藤よりも、指を絆創膏だらけにしている進藤に
ドキドキしていた。
 その指先がボクの髪を梳いて、首を抱え込む。柔らかい唇にキスをした。久しぶりに
触れた唇は、ボクを芯からとろかすほど甘い。進藤はその大きな瞳を潤ませて、ボクに
何度もキスを強請った。ボクは、それに逆らえない。逆らう理由がない。彼の望むままに、
キスを繰り返した。
 何度も夢に見た進藤の滑らかな肌の感触や、甘い体臭を確かめる。何ヶ月も離ればなれで
いられた自分が信じられない。
「ふぅ…あぁ…」
ああ…進藤の声だ。ボクの耳を通り、脳から全身に伝わる。身体が痺れそうだ。
「…とうや…して…」
ボクを誘う声。一気に熱が上がる。


(56)
 進藤の足を大きく開いた。
「は…あ…」
ボクが、少しずつ身体を進めるごとに彼は苦しげに喘いだ。進藤の傷だらけの指に、自分の
指を絡めて固定する。そのまま、一息に突き入れた。
「あぁ…!とうやぁ!」
目が眩みそうな快感が全身を包んだ。社としたときに感じた凶暴な快感ではなく、優しくて
穏やかな感情が胸に溢れた。だが、身体の方は、進藤を欲して止まない激情に流されそうだ。
進藤を責め立てる動きが激しくなる。
「はぁん…アア…とうや…とうや…」
涙を流しながら、激しく首を振る。
「と…や…オレ…もう…」
「ボクも…」
進藤が強くボクを締め付けた。その瞬間、ボクは進藤の中に放っていた。



 眠っている進藤をジッと見つめた。相変わらず、可愛らしい寝顔だ。ボクの手を握りしめている
絆創膏だらけの指にキスをしたとき、はだけた胸についている小さな飾りが目に入った。
「ここにも、貼ってみたい…」
と、無意識のうちに呟いていた自分に愕然とした。
 やっぱりボクは、ボクだ。どんなに、進藤を愛しく思っても、ボクの根っこには、
それしかないようだ。だが、進藤相手に無茶は出来ない。
「北斗杯…楽しみだな…」
社が相手なら、いろいろ無茶も出来そうだ。同じチームだから、ボクを避けるわけにも行かないだろう。
 進藤を腕に抱きながら、ボクの心は北斗杯へと飛んでいた。

おわり



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