初めての体験 Asid 56


(56)
 進藤の足を大きく開いた。
「は…あ…」
ボクが、少しずつ身体を進めるごとに彼は苦しげに喘いだ。進藤の傷だらけの指に、自分の
指を絡めて固定する。そのまま、一息に突き入れた。
「あぁ…!とうやぁ!」
目が眩みそうな快感が全身を包んだ。社としたときに感じた凶暴な快感ではなく、優しくて
穏やかな感情が胸に溢れた。だが、身体の方は、進藤を欲して止まない激情に流されそうだ。
進藤を責め立てる動きが激しくなる。
「はぁん…アア…とうや…とうや…」
涙を流しながら、激しく首を振る。
「と…や…オレ…もう…」
「ボクも…」
進藤が強くボクを締め付けた。その瞬間、ボクは進藤の中に放っていた。



 眠っている進藤をジッと見つめた。相変わらず、可愛らしい寝顔だ。ボクの手を握りしめている
絆創膏だらけの指にキスをしたとき、はだけた胸についている小さな飾りが目に入った。
「ここにも、貼ってみたい…」
と、無意識のうちに呟いていた自分に愕然とした。
 やっぱりボクは、ボクだ。どんなに、進藤を愛しく思っても、ボクの根っこには、
それしかないようだ。だが、進藤相手に無茶は出来ない。
「北斗杯…楽しみだな…」
社が相手なら、いろいろ無茶も出来そうだ。同じチームだから、ボクを避けるわけにも行かないだろう。
 進藤を腕に抱きながら、ボクの心は北斗杯へと飛んでいた。

おわり



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