トーヤアキラの一日 57


(57)
「あら、どうも、隣の田代です。まあ、アキラ君久し振りね!大きくなってェ、ホホホ。
新聞で見たわよ!最近は大活躍なんでしょ!凄いわ、本当に。お父様もお喜びでしょ!
ホホホ。あ、やっぱりお母様はお留守なのね。そうじゃないかと思ったけど、ほら、
至急の回覧板なものだからやっぱりねェ、ホホホ。内容はね、ほら、あっちのマンションの
工事が始まるので、その工事車両通過の注意事項と私道の通行止めの事なのよ。でもこの
辺りには車両は通らないみたいだから、私道を通れない事位かしらね問題なのは、ホホホ。
でもねェ、アキラ君に隣に回してもらうのも可哀想だし、もし何なら印鑑さえ押して
貰えれば私が回すわよ。どう?ホホホ。」
「・・・・・・・あ、あの、そうして頂けますか?」
「ええ、いいわよいいわよ〜。印鑑だけお願いね、ホホホ」
「あ、今すぐ持ってきます」
アキラは急いで部屋に戻って印鑑を取ってきた。アキラが玄関に戻ると、戸の中まで入り
込んでいたおばあさんはキョロキョロと家の中を覗き込んで興味深そうにしていた。
「あ、お待たせしました」
「あら、早いのね。じゃあここにお願いね」
アキラが内容に目を通して印鑑を押すと、回覧板を持ったままおばあさんはまた話し出す。
「ほら、小さい頃アキラ君に何度か遊んでもらった孫のまさしがね、今度海王中学に
入ったのよ!アキラ君の後輩になったのよねー」
アキラは全く覚えていなかったが、笑顔を作ってお祝いを言う。
「それはおめでとうございます」
「ホホホ!ありがとう。海王中の囲碁部は強いのね!まさしもちゃんと教えて頂けば
良かったわぁ」
「・・・・・・・」
「あら、ごめんなさいね、お忙しいのに、ホホホ。それじゃ、お母様がお戻りになったら
よろしくね」
「あ、はい。回覧板よろしくお願いします」



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