平安幻想異聞録-異聞-<外伝> 57 - 58
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「放せ……、放せよっっ!」
人気のない河原に、ヒカルの声が虚しく響いた。答えるのは、草陰の
虫の音だけだ。
暴れる上体を、ヒカルの腕の二倍も太いような盗賊の腕が捕らえて、
砂利の上に押さえつけた。
「…う………っ」
「検非違使様は、まだ御自分の立場が、わかっていらっしゃらないようだ。
教えてやれ、教えてやれ」
ヒカルの挟門に突き刺さったそれが今度は左右に大きく動かされる。
痛みより先に、痺れるような甘さがヒカルの背筋の上を走って溶けた。
まずい、と、思った。体の奥でよどんで溜まっていた、自分の一番暗くて
醜い部分を鷲掴みにされた気がした。
おそらく自分はこの責め苦に耐えられない。
ただでさえ、あの方違えの夜に、伊角に半端な昂ぶりのままに放りだされた
体は、ちょっとした刺激にも簡単に高められてしまう状態だ。
このままではきっと、自分は、浅ましく乱れて、下衆共の目にとんでもない
狂態をさらしてしまう。
暗闇に目をこらしても、見えるのは獣じみた盗賊の顔の輪郭と、空を覆う橋の影。
耳をすましても、聞こえるのは静かな川の流音と、僅かばかりの虫の声。草の
葉が風に擦れる音
助けなど、こようはずもない。
ヒカルは、肉の交わりの快楽に どこまでも弱い自分の体を呪った。
男が呻吟の声を上げながら、乱暴に中を何度も摺り上げる。ただ闇雲に出し入れ
しているだけのこんな動きにも、熱くなりつつある自分の体がいっそ疎ましい。
唇を噛みしめ、盗賊が早く終わってくれることを願いながら、欲情に自分の体が
蝕まれていくその音を聞く。
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心には反吐がでるような嫌悪感しかないのに、体はその快楽を受け入れて、更なる
熱を求めている。
そんな自分に何より虫酸が走った。
盗賊が、より強いつながりを求めてヒカルの腰を抱え直し、その拍子にヒカルの口
から、鼻にぬけたような高い喘ぎが洩れた。
「なんだ、こ、こいつ、感じてるぜよ」
盗賊達の忍び笑いが聞こえる。悔しくて再度の抵抗を試みたが、今度は腕だけで
なく、肩まで盗賊がその膝をつかって地におさえつけ、がっちりと動けないように
されてしまった。
その体勢のせいで、その男の股間がすぐ頭の上に来た。その股間に隆々と自己を
主張する一物に、こいつもするんだろうか、と、ヒカルは暗く考える。
ほんの僅かでいい。反撃の機会がありさえすれば……。
ヒカルの中を苛む痩せた男の尖ったものが、いよいよ激しく細かく抜き差しを
始めた。
腹の底から熱い塊のようなものが込み上げてきて、それは喉で嬌声に変わり、
噛みしめた唇の間から虚しく漏れでた。
「ん,…っ、…ん」
自分の下肢が、益々火照って、その先の快楽を欲している。頂点を求めて
震えている。
(あぁ……、やだ、イキたくない)
しかし、ヒカルの思い通りにならない淫靡な体は、この悦楽を逃がすまいと、
中にはまっている男の根をよりしっかりと銜え込む。
「こいつ、男に、だ、抱かれなれてやがる」
「んっ、あ、ああっう!」
男が喜んだように猛々しく腰を強く引いてから、勢いをつけ、最奥に尖端を
押し込む。その動きに、しっかりと閉じていたはずのヒカルの唇が開き、
感極まったような喘ぎが、河原に高く響いた。
それに調子づいた男はいよいよ激しく中を攻めたてて、抱え込んだ若い体を
頂点の間際へと追いつめる。
「ぁ、や、ぁ、ぁ」
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