失着点・龍界編 58 - 59
(58)
「…死ぬ程泣き狂わせてやる」
沢淵は自身の先端をアキラの腫れ上がった狭門にあてがい力を込める。
じわり、と肉体的な限界を超える事を知らせる激痛が下腹部に走り、アキラは
歯を食い縛り目を固く閉じた。ヒカルも同じだった。
他の男達はごくりと息を飲んで食い入るようにその様子を見ていた。
その時ドアが小さくノックされた。
「…オレだよ。入れてよ」
ドアの所で見張っていた男も食い入るようにその様子を見ていたがドアの
覗き窓から外に立つ三谷の姿を確認する。
「何だよ、いいとこなのに。しかたねえなあ。」
見張りの男が舌打ちしながらドアを開ける。
と同時に緒方がドアを蹴り破るようにして開き見張りの男が吹っ飛ばされた。
起き上がりかけた所をさらに顎を蹴り上げられて見張りの男は気絶した。
「な、何だ!?」
驚いた沢淵と二人の男は玄関の方を一斉に見る。
「…!!」
中に駆け込んだ緒方はヒカルと同じように部屋の中の光景に顔色を失った。
「何だてめえは!!」
ヒカルの後ろに居た男が緒方に飛びかかり揉み合いになった。
その機会を逃さずアキラは沢淵の体の下から抜け出て自分の頭を思いっきり
腕を押さえていた男の顔面にぶつける。
「ぐわあっ!」
男の叫び声をよそにアキラはヒモを解くためヒカルに駆け寄った。
(59)
「このガキが!!」
頭突きを受けた男が手で顔を押さえベッドを乗り越えてアキラの腕を掴んだ。
「あ…っ!」
ヒカルに触れる直前でアキラの指先が止まる。そのまま男は強い力で
引き戻すとアキラの顔を持って額を壁に叩き付けた。
ガッと鈍い音がしてずるずるとアキラは壁伝いに床に倒れた。
タオルの下でヒカルは叫んだ。
「塔矢になにしやがる!!」
ヒカルに代わってそう叫んだのは和谷だった。
緒方に続いて部屋に飛び込んで来た和谷と伊角がその男に飛びかかった。だが
男の襟首を掴もうとした和谷は顔を殴られてベッドの上に吹き飛ぶ。
「和谷になにをする!!」
伊角が腰にタックルして男を壁際に押さえ付ける。
「な、なんなんだこいつら!!」
組み付かれた男は両手を合わせ握り込んで伊角の背中に打下ろす。伊角は一瞬
衝撃で息が止まるが手は離さなかった。
男は二度三度伊角の背中に打下ろすが伊角は離れなかった。
「伊角さんナイス!」
和谷が切れた口の端の血をぬぐって再度飛びかかり二人がかりで男を
床に押し倒す。とにかくケンカらしいケンカの経験がない二人に取っては
それがせいいっぱいだった。
馬乗りになり、とにかく動けないように男を押さえ付けた。
「三谷!進藤と塔矢を頼む!」
和谷は玄関のドアの所に立っている三谷に向かって叫んだ。
|