セイジのひみつ日記 6
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館内に明るさが戻り、彼の顔を見ると頬は上気し、こめかみには髪がいくつか張り付いていた。
「…立てる?」
彼の荷物と食べきれなかったものを取り上げながら訊ねると、彼は何度か頷いてふらりと立ち上がる。
ジャケットを受け取ろうと思い手を出したが、潤んだ目にそれは拒否された。
また反応してしまうかもしれないから…そう呟く私の宝物は、15歳のストイックさをどこかに消え去って
いた。
結局、お互いに映画の内容は頭に入っておらず、私たちは彼の父親に内容を訊ねられたときのために
ネットで映画評論サイトを飛び回ることになったが、彼の父親は自分の息子に『楽しかったか?』と
訊ねただけに終わった。彼は館内で食べたハンバーガーが美味しかったと頬を染めて報告していた。
今度、彼とオールナイトの映画を見に行く約束をした。その誘いの裏側にどんな意味が込められている
のか、彼はおそらく承知の上で頷いた。
「今度はボクの番ですね」…私の下半身を見つめて笑うしたたかで負けず嫌いな彼を、私は心から
愛しいと思った。
6.21 S.O
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