残像 6
(6)
そうやってとりとめのない事を考えている内に、眠ってしまったらしい。
ふと気付くと部屋の中はもう明るくて、鳥の声が窓の外で聞こえていた。
アキラは傍らで寝息を立てているヒカルの顔を、また、見詰めた。
明るい色の前髪をかるく手で漉き、それから一筋を指にとってくるくると絡めた。
指からこぼれた髪に朝日があたって、キラキラと輝いている。
「ヒカル」と言う名前は、なんて彼に相応しいんだろう。アキラはそう思った。
彼はいつも明るくて、眩しくて、その光はいつもボクの心を照らす。
時々眩しすぎて目が眩みそうになるけどね。
髪を玩んでるアキラの手に、唐突にヒカルの手が重ねられた。
驚いて目をやると、ヒカルがぱちっと目を開けて、アキラを見た。
「なに、遊んでんだよ…」
「…陽に当たるとキラキラ光って綺麗なんだ。おはよう。」
ヒカルは半身を起こして、大きく伸びをして、気持ち良さそうに言った。
「なんかさ、すげーいい夢みてたような気がする。」
「…そう。」
アキラは小さく微笑んで、ヒカルを見つめ、saiの夢?と、心の中でヒカルに問い掛けた。
もちろん、口に出しはしない。そんな風に思ってしまう自分が悲しかった。けれど、それを
ヒカルに気付かれたくなくて、何もなかったように微笑った。
そんなアキラに、ヒカルは屈託なく、にこっと笑いかけて、アキラの唇に軽くキスした。
さっき思い出した夢の内容を心の中でアキラに語りながら。
おまえの夢だよ、塔矢。
夢ん中で、オレ、迷子になってて、一人で心細くて、寂しくて、泣きそうになってたら、
おまえがオレを呼ぶ声が聞こえたんだ。
それで、オレはすごくホッとして、安心して、嬉しかったんだ。
大好きだよ、塔矢。
― 完 ―
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