肉棒だらけの打ち上げ大会 6 - 10
(6)
「コラ〜和谷、チョロチョロと逃げ回るな!
師匠であるオレの言うことが聞けんのかあぁ!?
恩返しのつもりで裸にならんかい、塔矢門下にこれ以上大きな顔をさせて
たまるかっ!!」
「恩返しなら別の時にするっス! こんなの嫌ですよぅおぉっ!!」
和谷は必死な形相で逃げ回り、その後を森下が裸で追っかけているマヌケ
な光景に気をとられている芦原・奈瀬を尻目にヒカルとアキラは、
こっそりと会場を抜け出した。
「アレ? 進藤君とアキラがいないゾ」
少し経って芦原が二人がいない事にやっと気付いた。
「あー、本当だ! 逃げられちゃったか。
でもあと少しで和谷が裸になりそうだし、まあいいかな。
絶対シャッターチャンスは逃さないわよ、明日美ふぁいとっ〜!!」
握りこぶしを振り回し、目をキラキラ光らせている奈瀬を見て芦原は
──そのぐらいの勢い・真剣さでプロ試験に挑めば受かるんじゃないか?
・・・と思ったが、それを言うとブッ飛ばされそうな気がしたので黙って
いる事にした。
一方、ヒカルとアキラはホテル内の温泉浴場に来ていた。
「ふぅ〜、ここまでくれば安全かな?」
ゼェゼェと荒く息をするヒカルの目の前に、額に汗を滴らせるアキラの顔
があった。黒水晶のような光沢ある瞳に、強い意志を感じさせるシャープ
な眉。
そして、艶やかかな唇に蒸気し汗でしっとり濡れている白い肌。
ヒカルは思わずゴクンと喉を鳴らし、アキラの腕をつかみ自分の方へ引き
寄せた。
(7)
「どうしたんだ進藤?」
額から零れ落ちる汗を指で拭いながら、アキラは怪訝そうな表情をヒカル
に向けた。
「塔矢・・・・・・ダメ・・・?」
アキラはヒカルの意図にハッと気付き、目を丸くした。
「ここでか? 誰かが来たらどうするんだっ!」
「大丈夫だよ」
適当な事を口にしながら、ヒカルはアキラの浴衣の袖から両手を入れて、
直に体を弄る。
「し、進藤・・・・ダメだ、こんなところで・・・っつ!」
「もうこんなになってる・・・」
「キミが触るからだろっ!」
アキラの胸の突起はヒカルの指による刺激で徐々に硬くなっていた。
その反応に気を良くしたヒカルは、さらに下の方へと手を伸ばす。
「・・・・くっ・・・・・だっ、ダメだ止めろ!」
キッと諌める目線をヒカルにぶつける。すると、ヒカルはシュンとなって
肩を落とし、物欲しげな子犬のようなつぶらな瞳でジッとアキラを
見つめる。(どうする・アイフル〜状態)
──ううぅっ・・・・・・・。
そんな目されたら、まるでボクのほうが悪いみたいじゃないか!?
結局、根負けしたアキラは渋々ヒカルの要求を呑んだ。
ヒカルはニッコリと顔をほころばせて、「へへへ・・・」と言いながら
アキラをギュッと抱きしめキスをした。
丁度その頃、宴会会場では関西棋院のプロ棋士達が「六甲おろし」を
大合唱していた。
(8)
「イケル、イケルでえぇ〜、今年の阪神は優勝やっ!」
うおおお〜と、拳を振りあげて盛り上がる棋士達を横に、社は1人ビールを
飲んでいた。
「あーあぁあ、ええ大人がなんちゅう姿を晒しとんのや。
棋士と言えども一芸取ってしもたら、そこらのオッチャンと変わりないもん
やなあ」
そう言いながらグイッとビールの入ったグラスを一気に飲み、フウと
溜息をつく。再びグラスにビールを注ごうとすると、瓶はすでに空に
なっていた。
「もう全部飲んでしまったんか。すんまへーん、ビール追加お願いします」
と言いながら社が手を挙げた途端、ポカッと頭を強く叩かれた。
頭をさすりながら振り向くと、そこには社の師匠が鬼の形相で立っている。
「こりゃ清春、オマエはまだ未成年やろ! エエ加減にせいよっ」
社の師匠は、かなり酔っているらしく、すでに顔全体が赤くなっている。
「師匠、オレもう子供やない。一人前の棋士や!」
「何をほざいとんのや、ワシから見れば清春なんぞ、まだまだヒヨッコや。
子供らしゅう、このブドウジュースでも飲んどれ!」
社の師匠は、赤紫の液体の入った瓶をドンと社の目の前に置き、その場を
離れた。
「・・・何が悲しゅうて甘ったるいジュースなんか飲まなアカンのや。
オレはガキの頃から晩酌やっとんのに、ホンマたまらんわ」
ブツブツと1人愚痴り、口先を尖がらせながら社は仕方なく師匠が置いた瓶を
傾けてグラスに注ぎ、一口飲んで目を白黒させた。
──コ、コレ、酒や!? 師匠、ジュースと勘違いしたんやな。
社が飲んだのは、カクテルを作るときに使うカシスのリキュールだった。
(9)
──いひひひぃ〜、こらエエ。儲けモンやわ!!
師匠、酔ってジュースと間違えたんや。
カシスリキュールにオレンジジュースを入れて、上機嫌で飲んでいる社の
ところに、院生時代の先輩棋士達が集まってきた。
「よお清春、1人で飲んでいたんか?」
「先輩、久しゅうです」
「あのな、オマエに約束を守ってもらおうと思ってな」
「約束?」
「オマエ、北斗杯で一回も勝つことが出来なかったら何でも言うこと
聞くって言うたよな」
「エッ、そういえば、そんなこと言ったような・・・」
社の顔からサアーと血の気が引く。
──北斗杯代表に選ばれたとき浮かれてつい、そんなこと言ってしもたんだ。
ああぁあ、オレのアホ、アホ、ア──ホ―――!!
「清春、男に二言はないよな?」
「モ、モチロン、オレは約束は守る男や、なんなりと言ってや」
先輩棋士達は、宴会会場で裸踊りしている緒方や行洋をチラッと見てニヤリと
社に向かって笑った。
・・・数分後、宴会会場で行洋達に混じって裸踊りをヤケになってしている
社の姿があった。
(10)
あらゆる痴態をめくるめく繰りひろげられる愛と汗と肉棒満載の大宴会。
そこから死ぬ思いで逃げだしてきた憐れな子羊=和谷は、温泉施設前方に
流れている川岸で息を切らしながら、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「なっ、なんとか、かろうじて助かった〜!
とりあえず安心したら今度は腹へってきたなあ」
グウーと腹の虫を鳴らし途方にくれている和谷の耳に、ガサガサと草木を
かきわけて近づく足音が聞こえた。
「そこにいるのは誰だ!?
もっ、もっ、もしかして森下師匠かあぁあっ!!??」
疲れて川原にヘタっていた和谷は、目に捉える事が出来ないマッハな速さで
ガバッと立ち上がり、音のする方へ素早く身構えた。
「おーい、オレだよ和谷」
ビビりまくっている和谷の視界に現れたのは、和谷の兄貴分にあたる伊角
だった。
「何だ伊角さんかぁ。はあー、ビックリした!」
和谷はフゥーと大きく息を吐きながら胸を撫で下ろした。
「エライ災難だったな和谷」
「まったくだよ! 森下師匠、酒飲むと人変わるしなあ」
「ああ、そうだ。オマエの師匠、張りあうように塔矢先生の横で裸踊り
していたぞ」
「ハハハ、師匠らしいや・・・・・・・・。う〜、腹へった・・・・・」
再び和谷は腹を抱えながらその場にしゃがみ込み、小さく溜息をついた。
「和谷腹すかしてるのか? たいしたモノじゃないが持ち合わせあるぞ」
伊角は和谷の側に腰を下ろし、ズボンのポケットからある物を取り出す。
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