裏階段 三谷編 6 - 10


(6)
周辺部分を口に含んで中央の固くなった小さな突起を舌で叩く。少し強く唇を押し付けると
彼の薄い皮下脂肪の下の胸骨を感じる。心臓の鼓動が若干速くリズムを刻んでいる。
最初にあげた小さな声の後は彼は黙って愛撫を受けていた。
一通りの手順を踏んで彼の体内に精を放ち、それで終了する。それだけのものだ。
タイトルホルダーとなって後援会の会長に引き合わされる人物の人数や種類が増えた。
その内の一人が彼を、この少年をオレに紹介した。どういう意図があったのかは分からない。
「そこそこに打てる子だが碁を教えてやって欲しい。」含みのある顔でそう言われたが
その時は断った。彼自身がそれを望んでいそうになかった。
その後、意外な場所で彼と再会した。正確には彼を見かけた、だったが。
唇を離してもう一方の突起へ移動させる。今まで刺激を受けていた方は
艶やかな赤みにくっきりと形を顕わし、白く平らな胸と僅かな色の違いだけで
一体化しているもう一方とは異なるパーツのような様相になっていた。
沈黙しているもう片方にも行為を加える。
今度は強めに吸い小さな先端に歯を立ててやった。口の中で瞬時にそれは形を変化させた。
顔を見ると、彼は相変わらず視線をどこか別の空間に据えている。だが下腹部では
確実に変化を起こしている。この年頃の男子は獣同然だ。自分が望むと望まざると
関わらず性的な刺激を肉体的に受ければ嫌でも体は反応する。
進藤も、アキラもそうだった。この少年も同じだ。そして、かつての自分がそうであった。
「痛…っ!!」
一瞬噛む力が強くなり過ぎた。彼が声をあげた。


(7)
一度歯を離し、癒すようにもう一度口に含んで舌で慰撫する。
てっきり機嫌を損ね毛を逆立てて唸るかと思った相手は、意外に静かだった。
明らかにさっきよりも皮膚に赤みが差しこちらの刺激に対して反応を強める。 
もういちど犬歯の一番尖った先で小さな突起を捉えた。
ビクリと彼が小さく体を震わせ、息を止めた。
少しずつ力を加え、それこそ小さめのピアス程しかないその部分を潰すように噛む。
「痛…イタ…ア…っ、ハアッ…」
きつく噛みしごく程に彼の吐息に甘いものが混じり始める。
彼の両足を割り開いて覆い被さっているこちらの体の下で勃ち上がって来る感触がある。
最初見た時はそれ程ではないと思っていた彼のペニスが固く雄々しくそそり立ち、
先端を濡らしている。
「…痛いくらいが好き、か。そういうことかな。」
返答は来なかった。
ジッパーをおろしてこちらのモノを取り出し、彼の後ろの中心にあてがった。
彼の目が驚いたように見開かれこちらを向いた。逃げようとする体の脇の両腕を
再び力を入れてベッドに押し付け、乳首に吸い付き、噛む。
そうしながら下の方のこちらの先端で彼のトビラを圧迫する。
「…見かけと違って、随分強引なんだな、あんた…」
「相手に合わせているだけのつもりだが。」
痛みを伴う刺激を乳首に与えながら数度トビラを圧迫すると、ズクリと先端が
彼の体内に潜り込んだ。
冷めた言葉を発しながらも彼のアヌスはとても温かだった。


(8)
痛いと叫ぶもう一人の少年がいる。
赤みがかった柔らかくウェーブがついた髪で、黒と言うより茶に近い瞳の色。
透き通るような白い肌と痩せた体つきで、喘ぐように呼吸をし必死に自分の体の
上にのしかかっている者に訴えている。
『痛いよ…!痛いよもうやめて…!!』

「痛いよ…」
現実のほうの少年の発した声で我に返った。
少年の口調は切羽詰まったというより手順を踏まない事をたしなめようとするものだった。
先端の一番太い部分だけを飲み込ませただけの状態は彼に中途半端な苦痛を与えていた。
こちらが僅かに力を緩めれば若々しい弾力で押し出されそうである。
痩せた体に比例して彼の入り口もその奥の通路も相当狭い。
今まで何人の男がその無理を突き通す事に価値を見い出して楽しんだことだろう。
こちらにはその余裕はあまりなかった。
彼を欲した理由が見えて来たからだった。
それは彼を見かけた場所のせいでもあった。その時の彼の表情のせいでもあった。
一度彼から退いた。ズルリと異物を吐き出して一瞬ホッとしたように彼の体から緊張が解けた。
その安堵感を砕くようにもう一度強い力で押し入った。
「あああっ!」
体を捻って痛みから逃れようとするのを腰の部分を手で押さえ留める。
赤く腫れ上がった乳首を見せつけるように彼の胸部が反り返った。


(9)
自分でも不思議なくらいひどく興奮していた。
久しくアナルセックスから遠ざかっていたせいもある。
女性との交渉事も何か煩わしくて最近娯楽はもっぱら酒に走っていた。
人と飲む事があれば一人で飲む事もある。
勝手な理屈かもしれないが、そんなふうに女の事に関心が薄れて来ると
そろそろ結婚してもいいかなと考えたりもする。
適度に器量が良くて口煩くなければ誰でもいい。一人だけに縛られる気はさらさらない。
そういう話もないわけじゃない。人の顔を見ればお見合い写真を見せたがる後援会関係の輩は
一人や二人ではない。
もっとも、それこそそういう「つて」で結婚してしまえば、二度とこういう
火遊びどころではない“遊び”は出来なくなるだろうが。

「…ううーん…」
先刻より一段階奥に突き入られて彼は苦しげに呻いていた。
霧吹きで吹いたように細かな汗の水泡が首から胸、腹部にかけて浮かび上がっている。
ホテルの部屋の空調が若干高めのせいもある。こちらのシャツも汗で背中に張り付いていた。
だが服を脱ぐ気はなかった。恋人として肌を抱くわけではないからだ。
彼の体を押さえ付けてさらに奥へと無理矢理押し入ろうとした。
その時、彼の胸に視線を落としてぎょっとなった。
仰け反ったその胸の中央が縦に裂けてもう一人の少年の顔がこちらを覗いていた。
赤みがかった髪と薄茶色の瞳の彼と良く似た別の少年。それが、
頭部を、そしてゆっくりと上半身を持ち上げてこちらと向き合った。


(10)
「…消えろ」
白い影のように別の少年は無表情に揺らめき、こちらを冷たい目で見つめている。
今体を繋げているのがその幻の相手のような錯角だった。
こうして男の体の下に何度も組みしかれていたその少年は
自分が成長した時に自分に与えられた行為を与える側の人間になるとは、
思っても見なかっただろう。

髪や目の色を好きなように変える時代ではまだなかった。
家族からも、家族でないものからもその少年は排斥されていた。
色素が抜けたような白い肌と彫の深い顔だちと、若干長い手足のせいもあった。
父親や父方の血筋にないものとして、父と父方の親族から特に強く厭まれた。
母親は何も言わなかった。家族でありながら家族ではない、物心ついた時から曖昧な
境界線の中で囲碁に惹かれていったのは、自分のテリトリーを明確に主張できた
遊びだったからかもしれない。
「セイジくんは筋が良い。」
父親と自分の確執に遠慮して遠巻きに何かをいうだけの親族の中で、
プロ棋士という自ら特殊な世界に居たその伯父だけはその少年に優しかった。
わずかな機会の中で少年に囲碁を教えた。
厄介払いをするかのように父親はその伯父に少年を預けた。
母親が次に生んだ赤ん坊は真っ黒な髪と瞳を持っていた事に父親は満足していた。



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