恋 Part 3 6 - 10


(6)
想いのたけのすべてを込めて、僕はいつまでも進藤のふっくらとした唇を貪った。
舌を絡め、唇で唇を掴まえ、唾液まで味わい、頬に吐息を感じ、僕だけが進藤を貪るのではなく、進藤も僕を求め、ふたり最初から繰り返す。
進藤の指が僕の髪をくしゃくしゃにし、僕の指が進藤のうなじを辿り、いつか呼吸が乱れ、もうなにも考えられない。
ただ身体が熱い。
身体中に熱を感じ、狂いだしそうな気持ち……、快感というより至福という感覚。
身体が熱い。
素肌に纏いつく布地が邪魔だ。
身体が熱い。
僕は、進藤の華奢な体を閉じこめている腕に力をこめた。
進藤が困ったように囁いた。
「電気消せよ」
明かりとテレビを消すと、耳が痛いほどの静寂があった。
が、それもすぐに慣れてしまう。慣れてしまえば、どちらのものとも知れない鼓動が、うるさいぐらいに暗闇に響く。

愛しい。
なんでこんなに愛しいのだろう。
なんでこんなに自分以外の人間を愛しいと想えるのだろう。
ベッドの端に腰掛け、僕たちは改めて向き合った。
お互いの服を脱がせ、上半身裸になると、僕は目の前の進藤の身体をかき抱いた。
顎に進藤の金色の前髪が触れる。
幽かな吐息が進藤の口から漏れ、僕の頭を抱きかかえしがみついてくる。その身体が小刻みに震えている。

「寒い?」
 僕が聞く。

「熱…い…」
 進藤が答える。

僕は腕の中の進藤と一緒にベッドに倒れこんだ。


(7)
進藤のうなじに顔をうずめ、胸いっぱい進藤の香りで満たす。
柔らかな耳たぶに歯を立て、進藤の小さな悲鳴を楽しむ。
「進藤、僕のこと好き?」
進藤は答えない。
「いつから僕のこと好き?」
進藤は口を幽かに開き、吐息を漏らすだけだ。
僕の唇がうなじから滑らかな胸におりていく。
右手は進藤の身体の輪郭を何度も確かめるように撫でさすり、左手は進藤の手を握りしめる。
そうして掴まえていないと消えてしまいそうな程、今夜の進藤は儚なく思えた。
唇が進藤の胸の小さな突起に触れた。進藤の乳首が硬く変化している。
僕はそれを口に含むと舌先で刺激を加え、軽く歯を立て嬲り、強く吸い上げた。
「うっうぅぅ………」
進藤が身体をよじる。
感じている。受け入れてくれた。
そう確信できたから、もっと大胆に進藤を善がらせてみたかった。
僕は握りしめていた手を離した。
自由になった左手で、進藤のパジャマのズボンにそっと手をかける。
進藤が驚いたように身を起こそうとするのを、僕は乳首に歯をたてることで静止する。
「つっっ!」
進藤が突然の痛みに声をあげる。その小さな悲鳴が、僕をますます煽る。
その隙に乗じて、強引に進藤を生まれたままの姿にする。
僕は左手で進藤の身体の中心にある、それに触った。
もう熱くそそり立っているそれが僕を悦ばせる。
進藤が僕の愛撫に反応している証拠だから。
僕は手を上下させ直接刺激を与えた。進藤のそれはさらに質量をまし硬く憤ってくる。
進藤が胸の上から僕を引き剥がした。
「塔矢、やだ。さわんなよ…」
 僕は手を休めず聞き返す。
「いや?」
「やだよ……汚いよ」


(8)
弱々しい声……。
進藤の一番敏感な部分を握りしめ、僕は進藤の上下する白い腹の上に頬をすり寄せ、悩ましい進藤の表情に目を凝らす。
いいかげん、闇に慣れた目には、窓から差し込む月明かりが、立派な光源だった。
扇情的な光景だった。
乱れた髪は汗で額に張り付き、唇は快感を湛え幽かに震え、瞳は恥じらいに伏せられている。
僕の与える快感から逃れようとシーツを握りしめ、投げ出していた膝を立て、後ろにあとずさる。
目に映る進藤のすべてが僕をそそる。
僕は進藤の腹の上から上半身を起こすと斜めから重なっていた身体をずらし、進藤の膝と膝の間に移動した。
「汚いはずあるものか」
吐息を進藤の立てた膝に吹きかける。
「あぁっ……――」
進藤が白い喉を晒し後ろにのけ反る。
僕は上目遣いにその姿をながめ、進藤を口に含んだ。
「塔矢!!」
それは悲鳴だった。
逃げ出そうと抗う腰を強く手繰り寄せ、僕は頭を上下させる。
「やめ…ろ、塔矢…。やめ……」
僕の口の中に進藤の快楽の雫が滲みだす。
そのかすかな青臭さが僕の舌を刺激する。
同じ男だから、どこが感じるのか手に取るようにわかる。
僕は進藤の亀頭の先に舌を絡め、滑らかなそれが舌に与える感触を楽しみ、それから裏に走る筋にゆっくり舌先を這わせた。
「あぁぁ…! ふ……んっ……」
進藤がシーツの上でのたうつ。激しく足を突っ張らせ腰をひこうとしたが、それが叶わないとわかると、次に僕の髪を掴み引き剥がそうとする。
頬に触れる内股が汗のためしっとりと濡れている。
「塔矢…やめろ、…ダメだ――」
僕は口を離した。でも根元を指できつく絞めつけ進藤の射精を遅らせる。
「イっていいよ」
「い…やだ、汚い…うっ」


(9)
進藤は激しく首を降る。その切羽詰まった仕草が項点の近いことを教える。
熱くいきりたったそれに頬ずりしながら、さらに僕は言葉で進藤の快感をあおる。
「飲んであげるよ。一滴残さず」
僕は再びそれを口に含みねっとりとした愛撫を続ける。絶頂に導くには結局は激しい動作だということは知っているが、もっと進藤の声を聞いていたかった。
「ウッ…クゥ」
赤ん坊がしゃっくりでもしているような、そんな可愛らしい声が上から落ちてくる。
根元を絞めつけられたまま快感だけあおるから、行き場のないもどかしさだけが身体の内を焼くのだろう。
進藤の腰が動く。進藤の意志とは別のものとして本能のままに前に押しだされる。
身体が絶頂を求めているんだ。
「ダメだ…、ダメ…だ。…ダ…メっ……」
狂ったように進藤が同じ言葉を繰り返す。
僕は再び頭を上下させると、きつく絞めつけていた指を離した。
「あ! あぁぁぁ……」
絶叫とともに進藤の精液が、僕の口のなかに、勢いよく迸りでた。
僕はそれをすべて受け止め飲み下す。栗の花のような青臭い匂いが口いっぱいに広がる。でもそれが甘露にさえ思えるんだから、僕は相当おかしい。
僕が進藤のそばに身体をずらすと、進藤は僕に背中を向けた。
枕に頭を投げ出して苦しそうに息をする進藤の顔を上から覗き込み、「好きだよ」とまた聞かせた。
進藤が目を伏せる。拗ねているときの癖だ。
そんなつれない進藤の、細い頤に手を添えると、僕は無理矢理上向かせ、貪るように唇を合わせた。
歯列を割り、柔らかい肉塊に歯を立て、口蓋をまさぐり、進藤のおずおずとした反応を楽しむ。
進藤はキスが好きだ。
それを知っているのは僕だけなんだ。
拗ねていたって、丁寧なキスを続ければ、緩やかに溶けていくことを、僕だけが知っている。
これ以上の幸せがあるだろうか。


(10)
進藤が甘い吐息を漏らす頃、僕はおもむろに進藤の股間に手を潜り込ませ、その部分にローションを塗りこんだ。
「冷たい」
「あ、ごめん」
僕は慌てた。
ローションは掌で暖めてから…と、巡回先のサイトのQ&Aのコーナーで確認したのに、忘れていた。
冷静に事を進めるため、風呂場で一度抜いておいたのに、進藤の思いがけない表情の連続にやはり夢中になっている。
気を取り直し、ローションをたっぷりと手にだした。
ひやりとした感触が薄まってから、進藤の股間にぬるぬるとなすりつける。
進藤が身をよじりながら小さな声を漏らす。
濡れた手で優しく揉みしだきながら、身体中にキスの雨を降らせば、僕の腹の下で進藤の欲望がまた熱を帯びてくる。
素直に僕の愛撫に反応している。それが僕を大胆にさせた。
のけ反る白い喉に舌を這わせ、自由な左手で、乳首を探し当てる。
うなじを鼻でくすぐりながら進藤に囁いた。
「キスマーク…、つけるよ…」
進藤の答えは甘い吐息だけだった。
僕は進藤の胸にくちづけた。僕のものだという刻印を刻むように強く吸い上げる。たちまち内出血の鮮かな赤が浮かびあがる。
白いわき腹に、太ももの内側に、普段人に見せることのない部分に、殊更はっきりとした跡をつけた。
「塔矢…」
「痛い…? 進藤」
僕の声も荒い呼吸で乱れがちだった。
額の汗が進藤の腹にしたたる。執拗に繰り返される愛撫に身もだえする進藤。
片手でシーツを握りしめ、片手で声を漏らすまいと口を抑える進藤。白い華奢な身体にうっすらと汗をかき、いまは瞼を閉じ僕の与える刺激に素直に従っている。
こんな進藤の姿を見たことのある人間は世界の中で、僕ただひとりなのだ。
その意識が僕をさらに欲情させる。



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