弄ばれたい御衣黄桜下の翻弄覗き夜話 6 - 10
(6)
囲碁という名の土俵の中で、常に対等に、いや時に自分を凌駕するほどの戦いを
する相手が、こうも自分の腕の中で、初々しい様子を見せ、この状況に戸惑って
いるさまが、なんとも優越感をくすぐるではないか。
(引いて駄目なら、押してみろってね)
門脇は、罠にかかった様ににがっちりとそこに銜え込まれ、引き抜けない腕を、
ヒカルの股のより奥へと押し入れた。
尻のちょうど谷間にあたる部分に手の先が届き、女のそこに悪戯するみたいに、
上下に擦ってみる。
「………やっ、だっ……!」
手首にあたるヒカルのナニの感触。固さが増したのがわかった。
「なに、おまえ、女みたいにこんなとこいじられて感じるの?」
「そんなこと……ぁ……ひぃぁんっ!」
その声を封じようと、門脇はヒカルの口を押さえる手に思った以上の力を入れて
しまった。ヒカルの頬に門脇の指先が食い込む。
茂みの向こうのカップルは、相変わらずこちらに注意を向ける余裕はないようだ。
ヒカルの一瞬の悲鳴は、女の高い嬌声の中に溶けて消えていた。
「驚かせるなよ」
口にやった手を放し、その腕でヒカルの体を抱きしめた。抱きしめた体が、細かく
震えていた。
試しにヒカルの股間の奥の谷間をもう一度、指で撫でるみたいに愛撫してみる。
ヒカルは震えたまま、何かに耐えるような細い声を喉の奥からもらし、小さく首を
横に振った。
(ウソみてぇ。こいつ、本当にここで感じるんだ。男がこんなとこで感じるのかよ、普通。
そんなにここって敏感なもんなのか?)
まだ布の上から撫でただけだ。
それで、この有り様なら、他はどうなのだろう?
やはり同じように敏感なのだろうか?
門脇は好奇心のままに、後ろから廻したその手で、ヒカルのワイシャツのボタンを外し、
その下に着込んでいたTシャツも容赦なくたくしあげて、手を忍び込ませた。
「やめてっ、よっ、門脇さんっっ!」
(7)
その抗いの言葉も、小さく震えていている。
なんだか、いたいけな女子高生をかどわかし、夜の公園の片隅につれこんで、悪戯し
ている犯罪者の気分になってくる。女子高生といっても、渋谷で見かけるような
髪の色を抜いて化粧の濃い類いのやつらじゃない。どちらかというと、いつも
生真面目な学級委員タイプの清楚な女子高生――
進藤ヒカル自身は、前髪を金に染め抜くなんていうファンキーなヘアスタイルしてる
のに、そう感じるのは、自分が、いつも真剣な顔して碁盤に向かっている彼以外は、
よく知らないからだろう。
どうにかして門脇の行動をやめさせようと、僅かに自由になる腕で、門脇の膝を叩く
仕草さえ愛らしい。
(まぁ、碁はともかくな。腕力では、十代の細っこいガキじゃ、大人にはとうてい
叶わないってことを教えてやるよ)
ヒカルの太ももに挟まれたままの腕を、力に任せて強引に引き抜いて、門脇は自分を
叩くヒカルの腕を体ごと拘束した。だからといって、ヒカルの下肢を責めるのを
やめたわけではない。
その強引さに驚いて、一瞬開いたヒカルの足の隙間に、門脇はすかざず自分の膝頭を
差し入れていたのだ。
最初は膝頭だけだったそれを、モゾモゾと動かし、段々に太腿そのものを、ヒカルの
両足の間に割り込ませていく。
「門脇さ……っ、あんっ」
(8)
ヒカルの抗議の声を、門脇は快楽で封じた。
Tシャツの下に忍び込んだ門脇の手が、ヒカルの乳首を摘んだのだ。
そこも、思った通りに敏感だった。
外灯しかない暗闇の中、乳首を転がされ揉まれる快感に、ヒカルが唇を噛んで声を
殺しているのが、門脇にも気配でわかる。抗議しようと口を開けば、抵抗の言葉より
先に漏れるのは、おそらく快楽の喘ぎだ。
延々と紡がれる女の嬌声をBGMに、門脇はこの奇妙な状況を楽しんだ。
そう。この時までは確かに、門脇の行為は質の悪い冗談に過ぎなかった。
年下の生意気な少年に対する、行き過ぎたからかいであったのだ。
乳首をいじるだけでは物足りない――門脇は、ヒカルの太腿の間に押し込んだ自分の
腿をぐっと上に押し上げると、自分その膝を使って、ヒカルの股間を思いきり強く
擦った。
のけ反るようにヒカルが上を向いた。
植え込みの向こうで、女のイキつく悲鳴が聞こえた。
まるでヒカルが発した声のようだった。
少年の日に焼けていない喉が、蒼々とした外灯の色に染められ、きつく閉じられた
まぶたが、闇の中にぼんやりと照らし出される。
ヒカルが、一旦閉じた目をそっとあけて、抗議するように門脇を流し見た。
その筆舌につくしがたい色気に、門脇の喉がなった。
夜明け前に羽化する蝶を盗み見るような、妖しさだった。
門脇の冗談が、冗談でなくなったのはその時だ。
(9)
雄の表情になった門脇が、後ろからヒカルを抱えるようにして、その乳首を
左右交互に、潰すようにこねる。
同時に、自分の太股を、何度も強くヒカルの尻の割れ目に押し付けるように
往復させる。
自分の両足の間深くに食い込んだ男の足に与えられる快楽に最初、ヒカルは、
ひとつふたつ悲鳴をこぼしたが、門脇が「隣りに聞こえるぜ」と囁くと、それだけで
唇を噛んで静かになった。だが、股間を足でより強く摺り上げられるたびに、喉の
奥、空気を飲み込むような低い喘ぎがおこるのを、門脇は聞き逃さない。
手は更に、ヒカルの乳首を二本の指で挟んで、引っ張ったりこすったりしていた。
(入れてぇなぁ)
しかし、男相手にどうしたらいいのだろう。門脇は女相手の知識なら、それなりに
豊富な自信はあるが、男相手となると、聞きかじりの知識の断片が頭のほうぼうに
散らばっているのみで、まったく自信がない。
男同士でするなんて、想像するのも気味が悪かったから、聞くそばから忘れていっ
ていたというのもある。門脇は、今のこの自分の欲望を満足させるために、僅かに
残った知識を大急ぎで拾い集めた。
こんなことなら、この手の知識ももっと詳しくため込んでおくんだったと後悔し
たが、さすがに自分が男に入れたいなどと思う日が来るとは想像の埒外だったのだ。
ヒカルの手は、今はもう抵抗をやめて、門脇のジャケットを後ろ手にギュッと掴ん
でいる。
その手はむしろ、自分をこの先に誘っているように見えた。
門脇は心を決めた。
自分のジャケットを、指が白くなるほど強く掴んでいたヒカルの手を、強引に
開いて、外す。
股間を足で嬲られて、上体をガクガクさせていた体を、持ち上げるように芝生の
上に下ろし、組み敷く。
こうして仰向けに寝かせると、その華奢な体を青白い外灯が照らし出し、その頬が
すっかり上気しているのが、よく見て取れた。
ヒカルのズボンのジッパーを下ろし、デニム地のそれと一緒に下着も膝の上まで
引き下ろした。
(10)
ヒカルは抵抗しなかった。
いつもは翻弄されてばかりの相手が、今は門脇の体の下で、意のままだ。
門脇の目の下には、ヒカルの下肢が無防備に晒されていた。
その中心でたち上がっている、薄い陰毛に囲まれた若いペニスは、全然自分のモノと
違う気がするのが不思議だった。
とりあえず、さっき足でやったように、今度は手で、ヒカルの股間――尻の割れ目の
奥をまさぐり、さするように愛撫する。ヒカルの下腹部がうねるように反応する。
今、門脇が頭の中で思い描いているのは、女とのアナルセックスだ。入れるところは
同じなんだから、多分、同じやりかたで大丈夫だろう。
(まず、慣らさないとな)
門脇は中指を、その目標とする場所に恐る恐る入れてみた。
(おっ)
門脇が想像していたより、そこに入るのは楽だった。
もう一本指を増やすと、これも案外するりと入った。
ただ、中の熱さは想像以上だ。
入れた二本の指を中でぐいっと曲げてみる。
指を包む内壁の筋肉が、ギュッと、包み込むように収縮すると同時に、ヒカルが
身をよじり、僅かに開かれた唇の間から白い歯の色がこぼれた。
そのまま嫌がるどころか、次の行動を即すように、ヒカルはその手を門脇の腰に
添えて来た。
この行動に後押しされて、門脇は自分のズボンの前を開くと、自らの肉棒を
取りだす。それは出番を持ちかね、青筋を立てて脈打っていた。
門脇は、ヒカルのズボンを下着と共に更に引き下ろし、片足だけ引き抜くと、
その足の間に自分の体を割り込ませる。そして、そのまま、ヒカルの両足を自分
の腰の脇に抱え上げ、迷うことなく、そのすぼまりに、自分のたぎりを突き
入れた。
ぬちゃりと微かな音をさせて、門脇の体の一部が、ヒカルの中に沈んでいく。
指を入れた時ほど楽というわけではないが、それでも押し込めば押し込んだだけ、
門脇の熱い欲望の塊は、狭道の中を侵食していった。
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