オレが塔矢でヒカルがボクで 6 - 10


(6)
どうやら、夢じゃない。ボクが進藤になってるのなら、進藤はボクと入れ替わってるのか。
ええと昨夜、ボクは緒方さんと一緒だったから…。(緒方さんと一緒!)
進藤の貞操が危ない!ど、どうしよう…それに緒方さんとボクの事を知ってしまっても
進藤は、ボクを――好きでいてくれるんだろうか?アキラは、不安になった。
それにさっきの人は、進藤の何なんだ?
アキラは鏡の中のヒカルの瞳を、見つめた。揺れるような眼差しに吸い込まれそうになった。

伊角はズキズキと疼く股間を押さえて、呆然としていた。
進藤に先端をぺロリと舐められて放って置かれたそこは、とても収まりがつきそうになかった。

「今日、親いねぇんだ」昨夜、進藤はそう言うと上気した頬と濡れた髪で伊角を家に上げた。
風呂上がりらしい進藤の髪も身体もいい匂いがして、伊角はクラクラした。
冷蔵庫を空けて缶ビールを取り出し、「伊角さんも飲む?」と勧められたときは驚いたが
「へへ、冗談じょーだん」進藤はコップに牛乳を注ぐと、ゴクゴクと一気に飲み干した。
「ふうっ、風呂上がりの一杯は旨い!」そう言うと口のまわりの産毛(ヒゲとは言えない
ぽよぽよしたもの)についた牛乳を、ピンク色の舌でぺロリと舐めとった。
無意識らしいその仕草に、思わず下半身が疼く。だが進藤には、勿論そんな自覚は無いのだ。
「背が伸びるはずだな」まだ湿った髪をくしゃっと撫でると
「もうー、子供扱いすんなよ!早く打とうぜ。あ、ドリンク、好きなの適当に持ってきて」
そう言うと自分の部屋にさっさと行ってしまった進藤は、どこまでも無邪気だった。


(7)
やっぱりまだ子供だと可愛くなったかと思うと、泣き顔を思い出してどうしようもない程
欲情してしまう。伊角は2つの感情の間を行ったり来たりしていた。
今朝の進藤の反応は、信じられなかった。キスに積極的に応じてきた時、理性は吹き飛んでいた。
伊角は、ヒカルの部屋を出た。

伊角はトイレを借りて昂ぶりを処理した後、進藤に謝ろうと思っていた。
だがその時、進藤が洗面所の鏡の前に立っているのが見えた。バスルームの脱衣場でもある
そこで、着替えをしているのだと思った。だけど様子が、おかしい。
伊角は、鏡に写った姿から目をそらせなくなった。
進藤は少し下を向いてTシャツを胸の上までまくり上げ、自分で胸の突起をつまんだ。
「ん…」そしてなめらかで平らな腹部をなでるように、手を下へとゆっくりと滑らせていく。
伊角はごくり、と息をのんだ。誘っているとしか思えない。
なのに進藤は、伊角が背後に来てようやく気付いたというように「あっ…!」と声を上げた。
伊角は腕を進藤の前に伸ばし、Tシャツの裾と首周りをつかんで進藤の頭をくぐらせた。
そのまま押し下げると、Tシャツはヒカルの腕と背中をゆるく拘束するような形になった。
「ダメっ、伊角さん」進藤は言ったが、説得力は無かった。


(8)
ヒカルの股間に伊角の足が割り入れられ、アキラは後ろから下半身を洗面台に押しつけられた。
ヒカルのあらわになった上半身の胸の突起が薄赤く色づいて、触れてもいないのに
硬く勃ちあがっているのが、否が応でも目に入ってしまう。
「進藤…いま何してたんだ?」
(何…って)
進藤を抱くことを、想像してた。
ボクの愛撫に感じて、せつない声で喘いで、乱れて、快感に溺れて泣きじゃくる姿を。
緒方さんがボクにそうしているように、進藤は彼に抱かれているんだろうか?
あの可愛い声で、ものすごくいやらしい事をこの人の前では、言うのかも知れない。
自分でしてるとことか、射精する瞬間の顔だって、この人だけには見せているのかも知れない。
アキラは自分が嫉妬しているのか、興奮しているのか区別がつかなくなってきた。

伊角がヒカルの耳朶を噛み、わき腹に手を這わせた。
「ふっ…!」
さっきまでアキラが自らその手を這わせ、確実に熱を持ちかけていたヒカルの身体が
アキラの意志とは関係なくビクリと反応し、背がそり返った。
(進藤って、すごく感じやすいんだ…)
身体の中心が熱くなるのを、アキラは止められなかった。
伊角はヒカルの乳首を捉えると、指先ではさみ込んでつぶし、捏ねまわした。
「あぁんっ…い、いや…っ…ぅんっ」
アキラはヒカル自身も聞いたことのない、上ずった声を出してしまった。
初めて聞くその鼻にかかった甘い声は、伊角をいたく興奮させた。
「進藤、いいよもっと声出して。…気持ちいいんだ?」
首筋に舌を這わせながら、乳首をぎゅっと摘まむ。
「あんっ、も、やだっ…」
鏡の中のヒカルが頬を紅潮させ目尻に涙を浮かべて、伊角の腕の中でもがく。
しかしアキラが拒めば拒むほどそのヒカルの声と姿は、逆に伊角の、そしてアキラ自身
の興奮を高めてしまっていた。


(9)
「あ、ごめん痛かったか?」
伊角が後ろにさがり、ヒカルの身体を引き寄せた。
「その、ホントに嫌だったら言えよ、俺…」
そう言いながらも、伊角はヒカルの胸や股間をどことなく遠慮がちに弄ってきた。
巧みだが、強引で無遠慮な愛撫に慣らされているアキラには、その動きはもの足りない
くらいだったが、ヒカルの身体は敏感に反応してしまう。

アキラは自分のライバルといえなくもない男に、ヒカルの身体を弄られて欲情する自分
が嫌だったのだが、そんなことは誰にも伝えようがなかった。
さっきからヒカルのパンツの股間が威勢良くテントを張っているのを見れば、アキラの
浅ましさは一目瞭然だった。
ヒカルの昂ぶりを指先で確かめた伊角が、パンツと下着を同時に引き下ろすと、敏感な
先端が布地に擦られた。
「はぁん…っ」アキラは、思わず声をあげた。
伊角とアキラは、大人びた自分達のものより毛も薄く幼い形状の、だが小さくはない
ヒカルの強張りに、激しく劣情をもよおした。
ヒカルのあられもない姿を前にしたアキラの興奮の所為か、ヒカルのペニスはますます
猛り狂い、先端から透明な液が漏れ出してきた。
伊角はヒカルの腰に自分のものを押しつけ、荒く息をしている。
アキラは絡まったシャツをもがくように脱ぎ捨てると、ヒカルの強張りを手で隠すよう
に覆った。伊角に触らせたくなかった。
「進藤、恥ずかしいのか?」
ヒカルのその仕草が可愛く思えて、伊角は逆に興奮してきたらしい。
「ち、違う、ボ、オレ…」
伊角はフッと笑うと、ヒカルの腋をくすぐった。くすぐりの刑だ!こういうのは得意だ。
「ひゃっ、あんっ、いやぁっ」
アキラの力が抜けたところに、伊角の手が割り込んできて握り込まれた。
ぬるぬるした先端をもう一方の指で擦られ、握り込んだ手にぐいぐいと、扱かれる。
「ダメぇっ、んっ、あ、あっ、あぁ――――っ!」
ヒカルの身体が、伊角の肩に後頭部をもたせかけるように仰け反り、アキラは伊角の
掌に勢い良く精を放った。


(10)
アキラは夢中でヒカルの快感を追いながらも、ヒカルが眉根を寄せ潤んだ目をして
喘ぐ姿を脳裏に焼き付けていた。
下半身がじん、と熱くなる。たった今、達したばかりなのに。
ボクは、どこかおかしいのかもしれない…。
少し放心したアキラの視線の先で、伊角が自分の指についた精液を舐めた。
「あ…」
アキラは思わず伊角の手首をつかむと、掌についたヒカルの精液をぺロリと舌で
舐めとった。青い、苦味のない味がする。
さっき、子供っぽい恥じらいを見せたかと思うと、自分の放ったものを舐めてくる
ちょっぴり変態的なヒカルに、伊角は自分の分身が舐められているような思いだった。
「し、進藤、朝の続き…いいか」
「え?」
「その、あの時、口でしようとしてた…?」
「あ…すいません…オ、オレ、あの時、間違えちゃって」
(あ、まずかったかな、この言い方。でもボクはヒカルじゃないし…したくない)
『間違えたって、誰とだ。そいつには出来て俺には出来ないのかァッ!』
…とは、とても言えない伊角は正攻法で行くしかなかった。
「進藤、すまん。俺、前からお前の事好きだったけど、キスだとかああいう事
お前にしたのは誓って、今朝が初めてだ。お前が、俺にキスしてきたのは……
その、お前も俺が好きなんだと思って…」
「………初めて?」
「ん?いやそのお前の可愛い寝顔に、つい、な。だけどお前があんなふうにキス
してくるとは夢にも思ってなかったけど…進藤?」
初めて、ってことは2人は友達だったんだ?じゃあ、ボクがしちゃった事は…。
アキラはクラクラと伊角の前で気を失いそうになった。
「だ、大丈夫か!進藤!」
伊角は蒼白なヒカルの頬をピタピタと叩いた。



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