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(6)
「…なん…だよ…お前…」
ヒカルの口から放たれた声は微かに震えていた。
サングラスの奥からは表情を読み取れない。
その男の異様な気配に、ヒカルは一歩あとずさった。
塔矢の携帯、見知らぬ男。不吉なものが胸をよぎるのを感じた。


(7)
ヒカルは握り締めていた塔矢の携帯をズボンのポケットに押し込んだ。ヒカルよりはかなり背の高いその男は一歩一歩ヒカルへとにじり寄ってくる。後ずさりしようとするが、ヒカルはすぐに壁を追い詰められてしまった。心臓が早鐘のように鳴るのが、ヒカルの逃げ出す隙を与えさせない。
瞬間、男がヒカルへ飛びかかってきた。


(8)
ヒカルとて男子中学生だ。囲碁に明け暮れる毎日とはいえ、運動神経には自信がある。そのヒカルを上回る俊敏さで、男は片方の手でヒカルの首を押さえつけ、もう片方の手でヒカルにハンカチをあてがった。
「うわっ!何すんだっ…!」
抗議の言葉も言い終わらないうちに、ヒカルの意識が飛んでしまった。
「おとなしくするんだな…」
男の言葉を聞きながら…


(9)
………すぐそばで誰かがクスクスわらってる。
はっきりしない囁き声が、誰かにヒソヒソと言っている。
(みろよ、こいつ感じやすいみたいだぜ)
(女、みたいな顔してるもんな)
と返したヒソヒソ声はイヤラシイ響きを帯びている。
どちらも、聞き覚えのない声だった。いや、聞いたこともあるような…やっぱりわからない。どちらにしろ頭がぼんやりしていて……
「んっ」
と息が鼻から抜けてった。体の中をゾクンッと電気ショックみたいなのが走ったせいだ。それは何度も何度も、繰り返し体の中を走り、その度にジワンッて感じの甘いしびれが広がって、すごくイイ。
「ん……んっ……ん〜……」
(ふふっ、ほら、感じてるぜ。特に右がイイらしいな。)
俺ははっきりしない意識の中で身悶えた。
あっ、だっだめ、そこは舐めないでっ……
「あんっ」
しまった。声がでちゃった。一体誰がこんなこと…
ヒカルは重たい頭を持ち上げて声の主を確かめようとした。


(10)
声の主はやはりヒカルが知らない奴らだった。
さっきヒカルの顔に当てたハンカチにはどうやら薬が染み込ませてあったようだが、それがなんの薬なのかは、もちろんヒカルにはわかるはずが無い。ヒカルに分かるのは、手も、足も自由にならない事と、相手が二人組みだ、ということ。ヒカルの意識も次第にはっきりとしてきた…
「おい、起きちゃったよ。どーする?」
「いいんじゃねぇ?そのほうがもっと反応良くなるかもよ?」
そう言って先ほどヒカルに飛びかかった方はヒカルの乳首を指で摘む。
もう一人もニヤニヤしながらその様子をじっとりした目で眺めていた。
「あんっ」
ヒカルはビクンッと体を震わせた。さっきよりも大きく。ヒカルの頬は桃色に染まり、形の良い唇からは甘い吐息が漏れる。



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