初めての体験 6 - 12
(6)
トイレに入るなり、ヒカルは和谷を強引に個室に連れ込んだ。
「な、な、な、何すんだよ!進藤。」
和谷は、ひっくり返った声で怒鳴った。そんな和谷にヒカルは嫣然と微笑んで見せた。
そして、和谷の体を壁に押しつけながら言った。
「和谷・・・ホントはわかってんだろ?」
上目遣いに和谷を見る、その瞳の妖しさに股間がゾクリと疼いた。和谷は、
自分の中にわき上がった衝動に狼狽えた。
ヒカルが和谷のジーパンのファスナーに手を伸ばした。
「し・・・進藤・・・」
和谷は苦しげにあえいだが、ヒカルを止めようとしなかった。
「この間はしてもらったからな。今日はオレがしてあげるよ・・・」
ヒカルの手が和谷をやんわりと掴んだ。片手を添えるようにして、
緩急自在に手を動かす。その手の動きに反応して、和谷がゆっくりと
立ち上がり始める。
「う・・・あぁ!」
ヒカルの手淫に和谷は懸命に耐えた。眉間にしわを寄せ、顔をしかめている。
「和谷・・・我慢しないで。素直にオレを感じて・・・」
和谷の耳元でヒカルが囁いた。和谷の血液が一気に股間に集中した。
ヒカルは口元に笑みを浮かべると、和谷の前に跪いた。
「進藤・・・」
ぼうっとした顔でヒカルを見た。ヒカルの唇が和谷に触れた。
「!!進藤・・・!」
体中に電流が走った。ヒカルが舌先で和谷の先端をちろちろとなめた。
一旦、口の中に先端を納め、舌で愛撫した。唇を移動させ、下から上へ舐めあげる。
ヒカルの舌の感触に和谷自身がますます堅くなる。
手でするのとは違う温かくて、滑らかな口腔内の感触が、和谷を追い立てた。
「ああ・・・進藤・・・うぅっ・・・気持ちいい・・・」
ヒカルが和谷に軽く歯を立てた。ヒカルの口の中で和谷はまた大きくなった。
ヒカルが和谷を深く呑み込んだ。和谷の腰を掴んで、頭を前後に激しく移動させた。その動きにたまらず、和谷が進藤の頭を掴んだ。
「ああ!!進藤!で・・・でる・・・!」
(7)
ヒカルは和谷が放ったものをその口で全部受け止めた。ヒカルの口から
出された和谷のものは、糸を引いていた。ヒカルは、それを奇麗に舌で舐めとった。
和谷は全身から力が抜け、一人で立ってはいられなかった。
ヒカルは和谷の身支度を整えてやって言った。
「どうだった?結構うまいだろ?オレ。」
和谷に笑いかけるヒカルの姿には、いつもの無邪気さはなく、壮絶な色香を
放っていた。
そんな、ヒカルの様子に和谷の体がまた、疼き始めた。ヒカルは和谷の股間を
軽く揉むと
「元気だな。でも続きはまた今度にしようぜ。用があるんだろ?」
そう囁いて出ていった。和谷はずるずるとへたりこんだ。
ヒカルがクスクスと楽しそうにシステム手帳をめくっていた。
アキラは後ろから覗き込んで聞いた。
「それ何?進藤。」
「これ?今までの対戦相手の感想?見る?」
と、アキラに手帳を渡して言った。
「?四人しか名前が書いてないよ?」
アキラは不思議そうに訊ねる。
ヒカルの手帳にはこう書かれていた。
緒方・・・技量、力量文句無し。さすがタイトルホルダー。
塔矢・・・一見技巧派。しかし以外と力任せに強引に攻める傾向あり。
和谷・・・とにかく力で押すタイプ。がんがん攻める積極派。
伊角・・・押しは弱いが、冷静に進めるタイプ。その場の状況次第か。
「印象的だった相手だけだから。オレ、強い奴しか興味ないしね。」
と、ヒカルは無邪気な笑顔で答えた。
「ふーん?それより進藤・・・」
アキラがヒカルを寝室の方へと招いた。
<終>
(8)
ヒカルは一日の締めくくりに日記を書いた。日記と言っても、システム手帳に
その日の出来事を簡潔に書くだけだ。誰と会ったとか、どこへ行ったとか
そういうたわいもない物を日付の下に簡単に書き記す。
特別なことがあった時は、別のページに感想を入れておく。その感想も
シンプルだ。
ヒカルは棋院に行ったとき、ちょうど棋院から出てくる桑原に会った。
桑原は本因坊で、ぺーぺーのヒカルにとっては雲の上のような存在の老人だ。
その老人に向かってヒカルは軽く会釈した。
桑原は通り過ぎようとして足を止めた。そして、目を細めて、何か思案するように
ヒカルを上から下まで眺めた。
ヒカルは、じろじろ見られて、居心地が悪かった。もう一度深くお辞儀を
してその場から去ろうとしたとき、桑原が話しかけてきた。
「小僧、お前今から暇か?飯でも食いにいかんか?」
思いがけない言葉だった。ヒカルは躊躇した。どうして、本因坊と呼ばれる
この老人が自分などを誘うのだろう。
「すみません。囲碁ジャーナルの天野さんに呼ばれていて。」
「彼にはわしから言っとくよ。それならいいじゃろ?」
老人の言葉はヒカルに有無を言わさなかった。ヒカルはこの小さな老人の威圧感に
圧倒されて、黙って後をついていった。
(9)
タクシーの中でヒカルは桑原を盗み見た。桑原はすました顔で前を向いている。
ヒカルは老人の真意を測りかねた。
やがて、タクシーは一件の高級そうな料亭の前に、止まった。ヒカルはこんな店に
一度も入ったことがない。そんなヒカルを気にする様子もなく、ずかずかと中に入った。
女将や仲居も心得ているのか、「いつものお部屋ですね。」と案内していく。
広い座敷の部屋に通された。もう一間あるようだが、襖で遮られている。ヒカルは
理由もわからないまま、次々運ばれる料理を食べた。時折、仲居が意味ありげにヒカルに
視線を投げた。
本当はたいして食べたくなかった。だが、桑原の目が「食べろ!」と言っていた。
ヒカルは老人の無言の圧力に屈した。桑原のするたわいない話しに生返事をしながら、
無理矢理かき込んだ料理の味はよくわからなかった。
ヒカルは意を決して桑原に尋ねた。
「先生。オレになんか用事があるんですか?」
食後の一服をふかせて、桑原が言った。
「小僧、わしと今から一局打たんか?」
「ここで・・・ですか?」
別にこんな所まで来なくても、棋院でも良かったのではないか?ヒカルの疑問はますます
大きくなった。桑原は、そんなヒカルの顔を面白そうに眺めて、言った。
「そう言う意味ではないよ。わかっとるんじゃろう?」
ヒカルは立ち上がって逃げようとした。しかし、足がもつれてうまく歩けなかった。
「え・・・何これ・・・なんで・・・」
桑原がにやにやとヒカルを見ている。ヒカルはふらつきながら隣の部屋へと続く襖に手をかけた。
その部屋の真ん中に、一組の豪華な布団と枕が二つあった。ヒカルは真っ青になってへたりこんだ。
這って逃げようとする腰を捕まえられた。体に力が入らず、易々とひっくり返される。
とても、か細い老人とは思えなかった。
(10)
ヒカルは服を全部はぎ取られた。桑原はねっとりとした視線をヒカルの全身に這わせる。
老人に視姦されている!ヒカルの肌は羞恥の色に染まった。ほんのりと朱に染まったヒカルは
いつもの明るいヒカルと正反対の妖しい色っぽさがあった。
節くれ立った指や手のひらでヒカルの肌を這った。ヒカルの体がビクッとふるえた。
しかし、それは恐怖や嫌悪からくるものだけではなかった。ヒカルは、よく働かない頭の
片隅で考えた。先ほどの料理に何か入っていたのだろうか?それで、あの人たちはオレを
あんな風に見ていたのだろうか?いくら何でもこんな猿みたいな爺にやられるのはやだ!
ヒカルの思考は途中で途切れた。執拗に肌を這っていた老人の指が、ヒカル自身に触れ、
舌がヒカルの乳首をなぶり始めた。ねちっこく何度も何度も同じ場所をせめる。ヒカルは
声を出さずに、あえいだ。
必死でこらえようとしたが、ヒカルは耐えきれず、声を上げ始めた。
「やぁ・・・やだ・・・くわ・・・ばらせんせ・・・あぁん ンン」
桑原が満足そうに笑った。
「いいのか?かわいいのぅ。」
桑原はわざとぴちゃぴちゃと音を立てて、耳からヒカルを犯した。羞恥のあまりヒカルの肌は
ますます艶っぽく染まっていく。
「や・・やめてよ・・・せん・・・せい・・・」
泣きそうにあえぐヒカルの口を老人が塞いだ。ぬるりとした感触のものが口の中を蹂躙した。
ヒカルは桑原の舌を押しだそうとしたが、それは愛撫にしかならなかった。
涙を流すヒカルを無視して、桑原はヒカルを責め続けた。足を大きく開かせ、老人はヒカル自身に
舌を這わせた。
「あああぁ・・・や・・あ・・やだ!」
桑原の舌が後ろの入り口に届いた。その周辺をひたすら舐め続けた。ヒカルの中に舌が差し込まれた。
ヒカルはパニックになった。そんなこと誰にもされたことがなかった。足をバタつかせて暴れた。
・・・つもりだったが、実際には体を少し捻った程度だった。
「気持ちいいじゃろう?ん?」
老人の指がヒカルの中を行き来した。ヒカルはもう声も出なかった。と、突然ヒカルは解放された。
うつろな瞳で桑原を見た。
「や・・・やだ・・・!!」
ヒカルは小さく叫んだ。老人のグロテクスな物がヒカルに押し当てられる。老人だとは思えないほどの
堅さだった。
ずり上がって逃げようとしたヒカルの腰を掴むと、一気に中に突き入れた。
(11)
「いやだ─────────!!!」
桑原はゆっくりと動いた。ヒカルは揺すられながら涙を流し続けた。
自分は今、桑原に犯されている。
猿のように醜いこの老人に・・・。
しかし、この考えはヒカルを次第に陶酔させた。『醜い老人に犯される自分』それはヒカルを興奮させた。
桑原に盛られた薬のせいかもしれない。
「ああ────────っ!!」
ヒカルがはてても、桑原はまだうごめいていた。
桑原本因坊・・・伊達に年は食ってない!ろうかいな作戦に要注意!
ヒカルが手帳に書き込んだ文章を見て、
「なんだお前?本因坊と対局したのか?」
と、緒方が訊ねた。
「うん。今日時間があったから一局打ったんだけど・・・。手も足も出なかった。」
緒方が落ち込むヒカルの頭を撫でながら言った。
「食えないじーさんだからな。まあ落ち込むな。」
「すごくねっちこいんだぜ。」
ヒカルがふくれっ面をした。
緒方がヒカルを膝に乗せたとき甘えるようにヒカルが言った。
「それでね緒方さん。今日オレすごく疲れてるんだけどしなきゃだめ?」
「しょうのないやつだ。」
緒方はヒカルの頬を軽くつねって言った。
<終>
(12)
ヒカルのシステム手帳は、表紙が紺、背表紙が茶の革で出来ていて、
中学生の子供が持つには贅沢すぎる品だ。もちろん、ヒカルが自分で買った
わけではなく、プロ試験合格のお祝いとして貰った物だ。
「マスター、ホントにこれもらっていいの?」
ヒカルが目を輝かせて、聞いた。
「ああ。お祝いだからね。進藤君もこれからプロとしていろいろな仕事が
入るだろうから、こういう物も必要だと思ってね。」
マスターは、にこにこと人好きのする笑顔で言った。ヒカルは和谷と伊角に
連れてこられて以来、たびたび、この碁会所に通っていた。
大人慣れしていないヒカルは、初めこそ殊勝にしていたが、時間がたつにつれ、
いつもの闊達なヒカルに戻っていった。明るくて、人懐っこいヒカルは、
今では、この碁会所のアイドル的な存在だ。マスター自身もヒカルが可愛くて
しょうがなかった。
「ホントにありがとう!」
ヒカルは礼を言った。嬉しそうに頬を紅潮させて、何度もその手帳を開いたり、
閉じたりして見せた。ヒカルの嬉しそうな顔を見て、マスターもますます笑顔に
なった。が、ヒカルが急に沈んだ顔を見せた。
「どうしたんだい?何か気に入らないのかい?」
マスターが不思議そうに訊ねた。ヒカルは慌てて首を振って言った。
「ううん!ちがうよ!・・・オレ・・・お返し何にもできねぇなあと思って・・・」
「ハハハ。何だ。お返しなんていらないんだよ。」
マスターはヒカルの頭を撫でながら、言った。
「プロとして、がんばってくれれば、それでいいんだ。」
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