Happy Little Wedding 6


(6)
宿の亭主が運転する数人掛けの小さな送迎バスで到着したのは
周囲の緑によく調和する、白い壁に黒い枠木の建物だった。
小ざっぱりと明るい廊下を抜けて、各自の部屋に荷物を置いてから食堂へ向かうと、
食卓には白いレースのクロスが掛けられ、色とりどりの花をまるく活けたバスケットが
置かれていた。
「およめさん・・・」
アキラがぽそりと呟いた。
「お嫁さん?何言ってんだアキラ」
「けっこん式のおよめさんだよぉ」
先ほどの緒方との不器用な遣り取りの成果か、単に目が覚めてきただけなのか、
アキラはもうほとんど普段の元気を取り戻していた。
「この間、親戚のお姉さんの結婚式に行ったのよね。アキラさん」
「ン・・・そう」
席についても相変わらず膝の上からクマを離そうとはしないアキラだったが、
母親のフォローに嬉しそうにコクンと頷いてレースのクロスの端を持ち上げ、
パタパタしてみせる。
「あのね、これが、およめさんみたいでしょ?それからお花も」
花嫁のベールとブーケのことを言っているのだろう。
「へぇ、アキラ結婚式に行ったんだ!オレまだ行ったことないよ。何かご馳走出たか?」
「うんっ。聞きたい?あのねぇ、ケーキでしょ、キャラメルのアイスでしょ、ねえぶるでしょ、
メロンでしょ、それから・・・」
「おいっ、それ、全部デザートじゃん!」
「ほんと、アキラさんったらお菓子と果物ばっかり好きで困るわ。
結婚式でもご馳走はほとんど食べないし、おうちでだって、
お母さん毎日一生懸命お料理してるのにちっとも食べてくれないんだもの」
明子夫人が拗ねたように横目になって柔らかな頬を横からふにふに指で押すと、
アキラはくすぐったそうに首を捻りながら子供特有の、
人間の声帯から出ているとは俄かに信じがたい超音波のような声を出した。



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