戻り花火 6


(6)
時季外れの二人だけの花火大会の最後を締めくくるのは線香花火だった。
風に消されないよう二人が掌をかざして見守る中、
星を散らすような火花が夜の闇に弾けてジッ、ジジッと生き物が鳴くような音を立てた。
火花はやがて小さくなり、オレンジ色の熱が凝って綺麗な火の玉が出来上がる。
まるく凝った熱は自らの重みに堪えかねて、まずアキラの持っているほうが
ポトリと雫のようにオレンジ色の光の尾を引いて暗い地面に落下した。
「あ、」と少し残念そうな声を上げてから、アキラは再び沈黙した。
ヒカルが視線を上げると、アキラはしゃがんだ膝の上に手を揃えて置き、最後に残った
ヒカルの線香花火をじっと見守っている。
蝋燭と線香花火のかすかな灯りに照らされて、伏し目勝ちの睫毛が滑らかな頬に長い影を作っている。
ヒカルが花火でなく自分を見ているとは思いもしないのだろう。
僅かに唇を開いた無防備なアキラの顔からヒカルは目を離すことが出来なかった。

だから自分の線香花火が燃え尽きたのも、アキラがまた「あ、」と声を上げたことで初めて知った。
しばらくの間アキラはなお、花火の火滴が落ちていったのだろう地面の方向に視線を注いでいたが
やがて顔を上げると感心したように「凄く大きな玉だったね」とヒカルに言った。
本当はアキラの顔ばかり見ていたから花火の終焉間際の輝きなど見ていない。
だがヒカルは「あぁ」と答えた。
自分にずっと顔を見られていたなどと、アキラは知りたくないだろう。



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