無題・番外 6


(6)
誰に言うでも無く、緒方は、半分呂律の廻りきらなくなった言葉でこぼした。
「オレはなあ、アイツが小さい頃から知ってるんだ。
そうさ、ずっと見てたんだ。アイツが成長していくのを。
それを、丹精こめて育ててきた花を、いざ咲こうとした時に、あんなぽっと出のガキに横から
かっさらわれるとはな。」
違う、と、口では文句を言いながらも緒方は内心否定した。
咲き始めようとした花を無理矢理摘み取って開花させようとしたのが自分だ。
ただ大事に見守っていれば良かったんだ。そうすればこんな思いはしないで済んだ。
オレには、もうあの花を育てていく資格が無いから、アイツに手渡すしか無かった。
それとも、オレが何もしなくても、いつかはアイツに奪い去られる運命だったのだろうか…。
「へぇ…緒方さんに若紫趣味があったとは知らなかったなあ…」
―一体、誰なんだろう?小さい頃から知ってる?緒方さんの周りにそんな人いたかなあ?
親戚の子とか、近所の子とか?緒方さんの私生活も謎だからなあ…

芦原は、もうほとんど意識の無くなってる緒方の肩をポンポンと叩いてやって、優しく言った。
「一度や二度の失恋は人生の華ですよ。
いつかそのうち緒方さんにふさわしいひとがあらわれますよ、きっと。」
「…いるもんか。アイツは…あんな奴、この世でたった一人だけだ。」
誰だってそう言うんですよ、と芦原は心の中で呟いた。
「冗談じゃない…このオレが、おまえなんかの前で…愚痴って酔いつぶれて。
もう、うんざりだ。恋愛なんて…するもんじゃない………二度と、ごめんだ……………」



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