S・W・A・N 6


(6)
便座に腰掛けほっと力を抜いて、あの悪魔的な衝動を半分ほど外へと押し出した時
いきなりガチャッとドアノブが回りかけた。慌ててノブに取り付き抑える。
鍵を掛けると、向こう側で残念そうにカリカリカリ・・・とドアを掻く音が聞こえた。
相手の姿が見えないことで身も凍る恐怖を感じた緒方は恐る恐る聞いた。
「・・・アキラ君か?」
「他に、誰がいるって言うんです」
ほっと息をつきながらも緊張は解けない。こういう時は一人になりたいものなのだが。
「向こうに戻って少し待っていてくれ。すぐ空けるから」
アキラも夜中に目が覚めてトイレを使いに来たのだと思った。
だがよく考えてみれば隣で寝ていた自分が消えていてトイレの電気も点いているなら、
自分がここに入っていることはわかりきっているはずだ。
それを承知でアキラはドアを開けようとしたのだろうか?
嫌な予感は的中したらしくアキラがドアの前から立ち去る気配はない。

「アキラ君、そこにいられると落ち着かないんだ」
懇願するように言った。
アキラはクスクス笑って脅すようにまたドアノブをガチャリ、と鳴らす。
開かないと分かっていてもドキリとする。
出かかった物は半分は体外に中途半端に出、半分は途中で引っ込んでしまっていた。



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